リモートワークが増え、外食やイベントに出かける機会も減って早1年。長引く“ステイホーム”生活の影響で、おしゃれへのモチベーションは下がる一方。家族以外の誰に見せるわけでもないのだし、毎日同じ部屋着でいたっていい。
とはいえ、ずっと楽ちんな状態に甘んじていると、どんどんアンテナが鈍ってしまい、自粛明けになったらおしゃれ迷子になってしまいそう……。そんな戸惑いや焦りの声が多くの人から聞こえてきそうな昨今。
「このままでいていい?それともそろそろエンジンをかけた方がいい?」
いまこの時期のファッションとの付き合い方について、ミモレの連載でもおなじみの熊倉正子さんにお話を伺いました。

 

ストレス発散には大人の“遊び心”が効く


コロナ禍によって外出の機会が減り、おしゃれに対する熱量が下がっているという人が増えています。熊倉さんのファッション観にも変化はありましたか?

「私の場合、おしゃれのテンションはコロナ禍になる前から下がっていますよ。とくに会社勤めを辞めて毎日オフィスに行かなくなってから、服を着るのは暑さや寒さしのぎという原始的な理由のためだと言ってもいいくらい(笑)。

忙しく仕事をしていた頃のワードローブといえば、会社に着ていくスーツや夜のお出かけ用のイブニングドレスなどが中心でした。

でも今は、ポルトガルの田舎に住んでいて畑作業をすることがあるので、チャイニーズショップで買った500円くらいのゴム長靴を履いたりもして。だから、コロナ禍の影響を受ける以前に、生活様式が変わったことによって着る服が変化したと言えますね。

ただ、ステイホームで家にいることが多くなったので、服を選ぶときには『いかに着心地や居心地がよいか』ということをより重視するようになりました。ブランドよりも、カシミヤやオーガニックコットンなど肌触りの良い素材にこだわっていますね」

おしゃれへのテンションは下がりながらも、ステイホーム生活でストレスを溜めないように、取り入れ始めたのもまたファッションの力だという熊倉さん。

「服が汚れていなければ、毎日同じ格好をしていても構わないですよね。でもそれだとやはり服に飽きてきて、気分転換をしたくなってくるもの。
そこで私が考えたのが、外へ出かけないのにも関わらず、わざわざドレスアップをしてみるということ。家でのディナーの時間にイブニングドレスを着てみたり、何人かのお友達とZoomで食事会を開催し、テーマを決めて仮装パーティーのように着飾ってみたり。このドレスアップする食事会はなかなか面白くて、メキシカンをテーマにしたら、服装はもちろんお料理やお酒もそれに合わせたものを用意するんです。Zoomに限らず、私と同じコンパウンド(集合邸宅)に住んでいる友人夫婦とも4人でよく開催していますよ。

熊倉正子さん「1年のステイホームで変わったファッションとの付き合い方」スライダー1_1
熊倉正子さん「1年のステイホームで変わったファッションとの付き合い方」スライダー1_2
熊倉正子さん「1年のステイホームで変わったファッションとの付き合い方」スライダー1_3

先日も、“カジュアルな007”をテーマにした食事会を開きました。その007に出てくるセクシーなボンドガールは、たいてい水着かイブニングドレスを着ているじゃないですか。でもこのときは“カジュアルな”というのがテーマだったので、悩んだ挙句に選んだコスチュームはバスローブ。中には普通に服を着ているんですが、裸足にバスローブ姿で皆の前に登場したら笑えるでしょう? 
ヨーロッパではもう1年以上ロックダウンが続いていますが、その間にもミモレの連載で紹介したように、アメリカの“ダラス”や“カンヌフィルムフェスティバル”をテーマにコスプレパーティーを楽しんでいました(笑)」

 

やってみると楽しい! 自宅コスプレでテンションをアップ


連載の過去記事で、その様子の一端をうかがい知ることができるけれど、なんとも楽しそうな大人の遊び方! 

「こうして気分転換を図ることで元気になってくるのだから、確かにファッションにはもっとも早く、そして簡単に気分を高揚させてくれるような力があるのは事実。
たとえば気分転換のために、インテリアを突然サンタフェ風からスカンジナビア風に変えようと思っても、そうすぐにできることではないでしょう? 

でもファッションなら、メキシカン風スタイルからインド風に、またはカジュアルなスポーツウェアからドレッシーなイブニングドレスにと、比較的すぐにチェンジできますよね。それにこういう時こそ、似合うかどうか分からないけれど着てみたい服とか、買ってはみたもののちょっと派手で着るのをためらっていた服とかに、思い切ってトライするチャンス。

家で着ているぶんには他人から文句を言われることもないし、Zoomなら仲間内だけの世界なのだから、かえって大胆な装いを楽しめるかもしれません(笑)」

今はおしゃれを諦めて静かに過ごすこともできるけれど、熊倉さんのようにこの時期を逆手にとってしまうのも一案なのかもしれません。

「とくに気分が沈みがちのときには笑いが必要だから、私のようにおしゃれに遊び心を取り入れてみるのはおすすめの方法。
でも、コスプレパーティーのように大げさなことをしなくても、いつもと違う色のセーターを着てみたり、新しい形のデニムを履いてみたりするだけでもいいんです。朝起きてシャワーを浴び、『今日も一日どこにも出かけずに家にいるのかな』と思って暗くなるよりも、『今日は何を着ようかな?』と想像するほうが、前向きな気分になってずっと楽しくなるはずですから。

ファッションというのは本来、自分自身のためのもの。今はトレンドもブランドも関係なく、そんな原点に立ち戻って“本当に着たい服がどういうものなのか”を考えることができるいい機会だと思います。だから、イケイケなパジャマでもイブニングドレスでも、好きな格好をしてみたらいいんですよ」

【写真】熊倉さんのステイホームファッションまとめ
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