オタクの世界にあふれる助け合い精神
僕はオタクの世界がとても好きです。
いつも自分の好きなものに夢中で、推しのことが大好き。強く愛するものがある人は、そのあり余った愛が周囲に波及するのか、人にも優しくできる気がします。たとえば、まだ右も左もよくわからない新規ファンに気軽に声をかけ、必要な情報や役に立つ情報をアドバイスする。僕はオタクの世界に足を突っ込むようになってから、そんな優しい先輩に何人も出会ってきました。
そもそもオタクというものは、推しにもっと人気者になってほしいという願望を持っている人が多く、世話焼き体質。推しの良さを広めるためなら労力を厭いません。
だから、新規を歓迎するし、何かにつけてフォローもする。まだ新規の子が知らない情報があれば、惜しむことなく提供し、一緒になっていそいそと盛り上がる。そういうやたら入社後研修の行き届いたホワイト企業のようなやりとりが当たり前のように行われているのがオタクの世界です。
しかもこれは決して先輩からの一方的なgive&giveではありません。基本オタクとは、推しの話ができたらそれで幸せという生き物。だから先輩も、新規の子ともう何度披露したかわからない鉄板のエピソードを語ることで、まるで初見のようにまた新鮮に推しのかわいさを愛でることができるので、両者にとってwin-winなのです。
こうした助け合い文化こそが、オタクの美徳。たとえば、推しが出ている番組を録画し忘れた。そんなとき、さっと「DVD焼くよ」とを申し出てくれる人がいるありがたさ。あるいは、どうしてもこの舞台のチケットがほしい。そんなとき、チケット獲りに協力してくれる人がいるありがたさ。オタクをやっていると、人はひとりでは生きていけないということをしみじみ実感します。
『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』
著者:横川良明 サンマーク出版 1540円(税込)
「推し」とは、ファンであることを超えて、誰かにお勧めしたくなってしまうほどに、大好きな人や、もの、キャラクターのこと。若手イケメン俳優という「推し」ができたのを機にオタク生活に足を踏み入れた筆者が、「推し」が放つ不可抗力的な魅力と、「推し」に魅せられたオタクの行動を、冷静な視線を保ちながら熱く語り尽くします。既に「推し」のいる人には「あるある」エピソードが満載。まだ「推し」にめぐり会えていない人が読んだとしても、説得力のある考察の数々に膝を打ちっぱなしの一冊になるでしょう。
構成/さくま健太
第1回「オタクの金銭感覚はズレてる?「推し」に惜しみなく出費する理由とは」>>
第3回「見返りを求めない愛の正体は? こじらせ気味なオタクの恋心を探る」3月7日予定
横川 良明さん
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。mi-molletでの連載「推しが好きだと叫びたい」をベースにしたコラム本『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)が1月6日に発売。twitter:@fudge_2002