――なぜ「スナック キズツキ」に辿り着いたのか、理解できていないお客さんたちの本音を、ママはエアギターやタップダンスなどの愉快な方法で引き出していますね。
益田:誰かに悩みや愚痴をこぼすことで逆に傷口が広がることがあります。些細なことで傷つく弱い人間と思われてしまったのでないかという後悔なのかもしれません。「スナック キズツキ」では、お客さんたちが自作の歌などで内面を吐露します。カウンターで悩みや愚痴を聴いてもらっているのではなく、「ただ歌っているだけ」という言い訳できるほうが彼らも気楽なのではないかな? と考えました。
――ママと別れた後は皆、現実と少しだけ折り合いをつけられるようになり、自分の居場所へと帰っていきます。傷つけられた場所や人に、誰も背を向けなかったのはなぜでしょうか。
益田:環境はなかなか変えられないので、漫画の登場人物たちも元の場所に戻っていきます。ただ、彼らには「スナック キズツキ」という新しい「手すり」ができました。現実の世界では、本を読んだり、音楽を聞いたり、映画や芝居を観たり、そういうこともすべて「手すり」になっていると感じます。
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