共働き率が7割を超えるものの、いまだ家事育児の8割を女性が担い、男性の育休取得率は1割以下。女性の就業時間が特別短いわけでもないのに女性の半数近くの平均年収は200万円を下回ります。
その上、DVそれ自体を固有の犯罪として取り締まる法律はなく、たとえDVを受けても、一般的な暴行や傷害としての立件のハードルを超えられない限り、被害者には、そのDVが「命に関わるものであり、継続性がある」と自ら証明した上で、家から逃げ出すことを認めてもらうしか環境を変える道がありません。
おまけに配偶者暴力防止法(いわゆるDV防止法)による支援措置を受けていてもなお、実態や背景を見ない家庭裁判所は、独自の論理で加害者と子供との面会交流を命じるのです。そしてその面会に、公的なサポートは一切ありません。
本連載「DVアリ地獄」では、自らもDVサバイバーでシングルマザーのソーシャルライター・松本愛さんが、DV当事者の「声」を丹念に拾い上げ、日本のジェンダー意識の遅れの実態をレポートします。連載第1回目は、松本さんご自身の体験を振り返っていただきます。
※個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります
離婚後6年でも後遺症に苦しめられる
私はDVストレスの後遺症によるとものと思われる高血圧と高コレステロール血症、脳動脈瘤かと思ったら多分違うらしい頭の中の何かと、ヘルニアと腱鞘炎、そしてメンタルの不調を抱えています。離婚して6年も経とうとしているのに、いまだ過呼吸の発作が出ることがあるし、いてもたってもいられず不安に襲われて叫び出しそうになる夜も少なくありません。
ライターだと言うのにまともに本を読めなくなって数年、長文を書けなくなって丸1年。その間、ベッドの中で丸くなって眠るか、起きている時に少しでもボーッとしている時間があると脳内で元夫との言い争いがはじまるので(これがフラッシュバックなのかはよくわからないけど)ひたすらパズルゲームをして気を紛らわし過ごしてきました。おかげでゲームに出てくるおじさんのオースティンとはマブになり、ゲームのレベルは4000を越えるほど(無心になれるパズルゲームが好き)。
本業は美容ライターでやってきたというのに上手に身支度を整えられなくなって外に出られなくなり、それでもオースティンだけでは人恋しさを埋められず、Twitterでひたすら「眠い」「背中が痛い」「つらい」とか、あと脳内で未だ暴れる元夫のこと、子供に対してどうしても上手に接することができない赤裸々な苦しみを呟いていたら同じような境遇の友人ができました。
その友人たちとは気兼ねなく話をすることができ、ひたすら心身の不調を呟き続けても、エグい被害体験を語っても引かれないし、被害者によくある被害体験をネタのように笑って話してしまっても辛さを見逃されることもなく、「なんでそんなのと結婚したの」「子供が可哀想」などいちいち心に刺さる言葉で傷を抉られることもありませんでした。
これはいわゆるピアサポート(peer support)と呼ばれ、共通項と対等性をもつ人同士(ピア)が体験をシェアして支え合う、心理療法でも用いられる手法です。そうとは知らず、仲間と過去の体験と苦しい胸の内をお互いシェアして支え合う日々を過ごしていくうち、私は少しずつ回復し、そして、私たち日本人女性がとんでもなく理不尽な状況に置かれていることに気付いてしまいました。
私もこれまであまり自覚していませんでしたが、日本人女性が置かれている現状は過酷なのです。
ジェンダーギャップ指数121位はダテじゃない!
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