江戸中期の俳人として有名な与謝蕪村(よさぶそん)は、文人画家としても人気があり、多くの作品を残しています。そんな蕪村の作品約100点を楽しめる展覧会が、3月13日から府中市美術館で始まりました。『作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇』の著者・金子信久先生監修の展覧会です。

 

「ぎこちない」を芸術にした画家、与謝蕪村


「かわいい」「リアル」「へそまがり」そして「ふつう」⋯⋯。府中市美術館ではこれまでもユニークなキーワードで、親しみやすい展覧会を開催してきました。「春の江戸絵画まつり」としてすっかり定着し、美術ファンにもお馴染みです。

今回の展覧会で取り上げるのは与謝蕪村。趣深い、自然の情景を描いた国宝級の作品や、画家にして俳人である蕪村ならではの俳画、そしてデリケートなこだわりの「ぎこちなさ」から生まれた作品⋯⋯と、新しい蕪村の世界も存分に盛り込んで、まるで絵画のおもちゃ箱。その魅力は「上手い」でもなく「下手」でもない、朴訥さと力強さの境に、あるいはか細さと揺らめきの狭間にあるような⋯⋯。春の一日、そんな蕪村の魅力に浸るのはいかがでしょうか。

菜の花や月は東に日は西に 蕪村


月下で麦搗く卯兵衛さん―「涼しさに」自画賛

「涼しさに」自画賛は通期展示

「涼しさに」自画賛は、タテ30センチほどの横物。まるで我が家の(?)床の間で、自然の光で掛け物を楽しむがごとくの展示方法です。ここに描かれた「かわいいうさぎ」が、ポスターなどにも使われた展覧会の顔となっています。

奥州での月冴え渡る一夜、ごとごとと物音がするので外へ出ると、古寺で老人が麦を搗(つ)いていた。その名を問うと⋯⋯。


京からみちのくから、国宝も初登場も

 

長く一般公開されてこなかった国宝級の「山水図屏風」や、川端康成遺愛の国宝など、各地で大事にされてきた作品が集結します。「画家にして俳人」である蕪村にしか描けない、ユーモアあふれる美しい「俳画」の洒脱も見どころです。

読んでから見るか、見てから読むか?

『作家別 あの名画に会える美術館ガイド』p.170-171

『作家別 あの名画に会える美術館ガイド』では、蕪村の代表作として「富岳列松図」(重要文化財・愛知県美術館蔵〈木村定三コレクション〉)があげられています。今回の展覧会では前期(~4月11日まで)に展示されます。

『作家別 あの名画に会える美術館ガイド』p.172-173

同じく紙面に掲載されている「野馬図屏風(京都国立博物館蔵)」「鳶烏図(北村美術館蔵)」「紫陽花霍公図(愛知県美術館蔵)」の3点も、今回の展覧会で見ることができます。(いずれも前期展示)


展覧会紹介
与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家 展

 

会期:2021年3月13日(土)~5月9日(日)
(※一部の作品を除き前期と後期で展示替えを行います。前期:3月13日~4月11日、後期:4月13日~5月9日)
会場:府中市美術館(東京都府中市浅間町1-3)
休館日:月曜日(5月3日は開館)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

問い合わせ先:050-5541-8600(ハローダイヤル)

 

チケット読者プレゼントのお知らせ
5組10名様に「与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家 展」鑑賞券をプレゼント

府中市美術館で開催される『与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家 展』(2021年3月13日~5月9日)の観賞券をプレゼントいたします。

応募締め切り:4月12日(月)〜11:59まで
●応募にはmi-mollet(ミモレ)の会員登録(無料)が必要です。
●プレゼントのご応募は、1回までとさせていただきます。
●当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。

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『作家別 あの名画に会える美術館ガイド著者 金子信久

若冲、北斎だけじゃない! 江戸絵画はこんなに楽しい、かわいい、笑える……超絶技巧からヘタウマまで、知らなきゃ損する愉快な世界へ!
江戸絵画の教科書決定版! 120人の絵師、80のミュージアムを収録しています。なかなか旅行に出られない今こそ、紙上で各地の美術館へ。

金子信久(かねこ・のぶひさ)
1962年、東京都生まれ。85年、慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館学芸員などを経て府中市美術館学芸員。専門は江戸時代絵画史。著書に『旅する江戸絵画 琳派から銅版画まで』(ピエ・ブックス、2010)『ねこと国芳』(パイ インターナショナル、2012)『日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想』(共著、小学館、2013)『別冊太陽 円山応挙 日本絵画の破壊と創造』(監修・共著、平凡社、2013)府中市美術館編『かわいい江戸絵画』(求龍堂、2013)『もっと知りたい長澤蘆雪』(東京美術、2014)『たのしい日本美術 江戸かわいい動物』(講談社、2015)『めでる国芳ブック ねこ』『めでる国芳ブック おどろかす』(ともに大福書林、2015)『日本おとぼけ絵画史 たのしい日本美術』(講談社、2016)『めでる国芳ブック どうぶつ』(大福書林、2017)府中市美術館編『歌川国芳 21世紀の絵画力』(講談社、2017)『鳥獣戯画の国 たのしい日本美術』(講談社、2020)ほか。

構成/からだとこころ編集チーム