「40代後半になると、みんな実績や肩書きがついてきて、ある程度偉くなってしまいますよね。そうすると、マネージメントばかりで何かと不自由。だからこれからは自分がまったく知らない分野でやり直したい、と思ったんです。でも誰かが声をかけてくれるのを待っていたのでは、ダメ。自分から動かなければ。それでまず『暮しの手帖』を辞めることにして、昨年の11月末に辞表を出したんです」
そこから、「一新人として働くならどこか?」を考えたとき、一番に思い浮かんだのがIT業界だったという。
「それまでの僕は、スマートフォンではなくガラケーという人間。それも緊急連絡用として持っていただけです。調べものもネット検索をかけることはなくて、パソコン使用はほとんどメールのみでした。ITというのはそれくらい僕の生活に入っていないものだったけど、一方で、世の中の多くの人がなくてはならないものとして使っている。すごいな、叶わないなといつも思っていたので、次に進むならここかな、と思ったんです。そう決めた頃に、縁あってクックパッドの方々と知り合い、面接をして話を聞いてもらい、この春入社することになりました」
自分にラクをさせると、一気に退化する
昨年11月末に辞表は出していたものの、引き継ぎなどのために今年3月31日までは雑誌『暮しの手帖』の編集長職を務めていた松浦さん。退社翌日の4月1日には、もうクックパッドに入社したそうで、何と、一日も休んでいないのだ。転職というと、旅行をするなりしばらくのんびりするなり、リセットのための時間を設けたいと思いそうなものだが、そういう気持ちはなかったのだろうか?
「時間がもったいない、早く働きたいという思いしかなかったですね。ラクをしようとしたら、自分のポテンシャルが落ちていく。そうすると一気に退化していく気がしたので、ラクはさせないぞ、と。むしろそっちのほうが恐怖だったんですよね。だからとにかく一刻も早く新しい環境に慣れて、会社に貢献したかったんです」
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