生命保険会社が毎年行っている、「大人になったらなりたいもの」という調査で、突如、「会社員」が1位になるという出来事がありました。しかしながら、これにはちょっとした事情があったようです。

 

この調査は第一生命保険が毎年、行っているもので、今回(2020年)で32回目となります。小学生の男の子で1位になったのは、何と「会社員」で、2位のユーチューバーや3位のサッカー選手を上回りました。一方、女の子は1位がパティシエ、2位が教師、3位は幼稚園の先生(保育士)でした。

「第一生命『大人になったらなりたいもの』アンケート」より抜粋。

例年は、男の子の1位はサッカー選手、2000年代までは野球選手というのが定番でした。女の子は「食べ物屋さん」もしくは「お菓子屋さん」でしたから、男の子だけが、これまでランキングにほとんど登場してこない職業が1位になったわけです。

ネット上では「コロナ危機や日本の貧困化が、子どもをここまで安定志向にしているのか?」と驚きの声が上がりましたが、この結果にはカラクリがあるようです。

これまで同調査は、第一生命の担当者が顧客を訪問した際に実施していたのですが、今回はインターネットによる調査に切り替わりました。また、ネット調査の特性上、選択肢が事前に提示されるようになり、基本的にその中から選ぶ形になっています。

これは極めて大きな変更ですから、従来のランキングとの連続性はないと考えた方がよいでしょう。

ちょっと考えれば分かると思いますが、「将来何になりたい?」と聞かれて、即座に「会社員」と答える子どもは、少ないはずです。筆者が子どもの頃にもこうした質問をされた記憶がありますが、「会社員」という回答は1ミリも思い付きませんでしたし、周囲にもそのような回答をした子どもはいなかったと思います。

しかし、ネットで選択肢が与えられ、自ら紙に書いたり、声に出さなくてもよいということになると、人の行動は大きく変わります。選択肢の中に会社員があれば、これを選択する子どもが一定割合、出てきたとしても不思議ではありません。したがって、コロナ危機で急激に守りに入ったとまでは断定しない方がよいでしょう。

しかしながら、いくつか気になる点もあります。

 
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