松浦さんは、これまでの実績から得てきたキャリアや肩書きには一切こだわらないという。それは「プライドを道具にしないため」だと言う。

「年齢を重ねると、どうしてもプライドが生まれますよね? 僕はそのプライドを道具にしないようにしているんです。"道具にしない”というのは、例えていうならば、手に入れたトロフィーをわざわざ部屋に飾りはしないということ。トロフィーをもらったこと自体は確かに自分の中にあるけれど、それを人に見せるために飾るということはまた別です。経験の中で培ったプライドがあるのは悪いことではないけれど、そのプライドにこだわっていると、素直さ、謙虚さを失ってしまうと僕は思うんです。この年齢になったからこそ、やはり素直さや謙虚さを失わないように気をつけなくてはいけない」

 

では、そんな風に自分自身が常に素直な状態でいるためには、どうしたらよいのだろうか? 
「僕は、どういう環境で働き、日々をどう暮らすかがとても重要になってくると思っています。それこそが、今回、WEBで『くらしのきほん』をスタートさせた理由でもあるんです」

規則正しい生活が初々しさを生む 

「暮らしを大切にしようという想いが強いのは、もともとの僕のマインドもありますが、様々な経験を経てきたうえでの僕の精一杯でもあります。これまで日々の暮らしの中でいろいろなことを経験し、感動してきました。そこから自分の中に残ったものを伝えたい、それによって人に喜んでもらえたら‥‥‥、そう想っているんです。ただ、そのためには常に感動できる自分でいないといけない。好奇心という窓が開いていることが大切なのです。そのためには、シンプルですが、規則正しい生活をして元気であることが不可欠なんですよ」

その言葉どおり、松浦さんは、朝は毎日4時半に起きるという。1時間マラソンをし、朝食をとり、誰よりも早く8時には仕事をはじめる。帰宅はできるだけ定時の18時半。終業後、人に会ったり、街中に出かけたりもしない。食事も、できるだけ身体に負担の少ない菜食を心がけているそうだ。