他人の名前を忘れなくなる2つの習慣

 

忘れると大変なことになる人の名前、なぜ大事なのに忘れやすいのでしょう? 

これは「ベイカー・ベイカー・パラドクス」と呼ばれる現象で、次のような実験から明らかになったものです。実験では2つのグループに対して、それぞれに知らない男性の顔写真を1枚ずつ見せていったのですが、その際、1つのグループにはその人の名前、もう1つのグループにはその人の職業を教えたのです。

 

なお、ここで大事なのは、教えた言葉が「人の名前」にも「職業」にもなる言葉だったことです。たとえば、「ベイカー」=「パン屋」、「ポッター」=「陶芸家」という具合です。

この後、顔写真を見せて教えられた情報を思い出してもらったところ、名前よりも職業のほうが思い出しやすいことがわかったのです。この思い出しやすさの違いは、人の名前か職業かによって、同じ言葉でその言葉から連想される関連情報の量が違うからだと考えられています。

人の名前としての「ベイカー」は人の名前以上でも以下でもありません。せいぜい、同じ名前で知っている人を思い出すぐらいでしょう。一方、職業としての「ベイカー=パン屋」であれば、「パン屋」からさまざまな関連情報が思い出されます。

このため思い出す入り口となる情報が、職業のほうが多くなるので、思い出しやすくなったというわけです。


【対策①】最初に会ったときにできるだけ名前を呼ぶ


この名前を忘れるミスをしないための対策として、簡単にすぐできるのは、最初に会ったときに、できるだけ相手の名前を声に出して繰り返しておくことです。たとえば、名刺交換をして、ミーティング中に、相手の名前を意識的に呼ぶようにする。

それだけで、相手の名前を呼んだという経験が記憶となって忘れにくくなります。

「○○さん、はじめまして」
「○△さんが今おっしゃったように」

相手の名前を呼ぶと、相手との距離も近づきやすくなるといわれています。プラスの効果も大きいので、初めて会ったときに、ちゃんと名前を呼んで、できるだけ会話の中に名前を入れて繰り返しましょう。


【対策②】関連情報とつなげて覚える


また、できるだけ関連情報をつなげておくことも思い出しやすくなるために有効です。たとえば、同じ名前の人が知人にいたら「大学時代の□□さんと同じ名前だ」というのも1つです。また、具体的なイメージ、突飛なイメージほど記憶に残りやすいので、名前から浮かんでくるイメージと目の前の人を結びつけてしまうのが効果的です。

たとえば、「竹内さん」であれば、「竹」がたくさん生えている中に、その人が浮かんでいる、なんていうイメージをつくっておけば、その人の顔を見たら「竹」が浮かび、「竹」から「竹内さん」という名前を思い出しやすくなるのです。(宇都出雅巳さん)