これからやって来ると言われる人生100年時代、私たちは途方もなく長い老後を迎えることとなりそうです。人になるべく迷惑をかけず、痛みもなく、体も自由に動くままで人生を全うしたいというのは、誰もが願うこと。「老化」を感じ始めたその時から、自分の20年後、30年後のためにできることは何か、山田先生が信頼できるエビデンスを元にわかりやすく伝えていきます。
*「5つのM」=アメリカの老年医学学会が提唱している、高齢者診療の指標

 


「フレイル」を絵で理解してみよう


老化を知るにあたり、もう一つ知っておきたい言葉があります。「フレイル」という言葉です。この言葉、聞いたことがあるでしょうか?

フレイルとは、「老化に関連した生理的な衰退」を意味します。これだけだとまだ抽象的でわかりにくいかもしれません。

下の影絵をご覧いただくともう少しイメージがつきやすいかもしれません。これは、フレイルを評価するために作られた、臨床フレイルスケールと呼ばれるものです。一番上の人は走っている様子が見てとれるものの、段々と杖や歩行器を使い始め、やがては車椅子に乗り、寝たきりになっていく様子がわかります。この図の数字が大きくなるつれて、「フレイル」の重度が増していきます。
 

臨床フレイルスケール(参考文献1より編集部抜粋)

 


元気だった祖父が介護施設へ


私の祖父も晩年は重度のフレイルでした。そんな祖父も、少なくとも70歳まではキャッチボールもできるぐらいに、フレイルとは無縁だったのです。私のキャッチボールも、もしかするとフレイルの予防に一役かっていたのかもしれません。しかし、脳梗塞の発症を境に、全てが変わってしまいました。

キャッチボールはおろか、歩くのがおぼつかなくなり、転んではいけないと移動が制限されました。そして、もう家族では介護が不十分になり安全が確保できないと、介護施設に入ることになりました。施設ではほとんどの時間を座ったり寝たりして過ごしていたと思います。家にいるのとは比べものにならないぐらい刺激が減り、物忘れは急速にひどくなりました。いつの間にかコミュニケーションも取れなくなっていました。

歩くこともできなくなり、あっという間に寝たきりになりました。急速にフレイルが進行していたのです。

そして、ある日心臓の病気が見つかり、病院に運ばれました。