自らもDVサバイバーでシングルマザーのソーシャルライター・松本愛さんが、DV当事者の「声」を丹念に拾い上げ、日本のジェンダー意識の遅れの実態をレポートします。公私ともにパートナーだった男性と授かり婚したBさんは、酒乱で過干渉の義母とマザコンで自己破産歴のある夫との同居生活の中、緊急帝王切開で出産。夫の心ない一言でうつ状態になってしまいます。Bさんは夫に義母との別居を提案、夫は渋るものの義母がそれに応じます。しかしそれがきっかけで夫からの嫌がらせがエスカレート、経済的DVが始まって……。

※個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります

 


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我慢して結婚生活を続けるより、離婚したほうが何倍もマシ


せっかく姑と別居したのに、母親がいないことで余計に苛立ちと怒りの感情を表に出すようになった夫。2人の夫婦関係が破綻していることはもはや隠しようもありません。

しかし夫婦関係というのは往々にして破綻していても惰性で続いてしまいます。まさにゆでガエル理論そのまま。理不尽に飼い慣らされ、パワーを吸い取られた状態で離婚という非日常かつネガティブなことに挑むのは普通の人にできることではないからです。

だからこそ関係破綻から離婚へと至る背景には「我慢して結婚生活を続けるより、離婚したほうが何倍もマシ」と決心せざるを得ない、重大な事件が隠れていることがよくあります。

Bさん夫婦にとってのそれが起こったのは義母の別居からわずか数カ月後のことでした。

 

親子3人で暮らし出した新居のあちこちには、彼が昔使っていたという壊れたパソコンなど、今はもう使用できない荷物が。「処分しようと思う」と前に夫が言っていた品物の整理を改めて提案したときのこと。処分するという前言を翻し「義母の元へ送る」と言い出しました。

しかしその義母は一人で住むには贅沢な広い部屋に引っ越しており、Bさんは自分たちの家の家賃に加え、その義母宅の家賃の不足分という名目で、月々数万円の仕送りを負担させられていました。そこで「予算オーバーの部屋を勝手に借りて、それを物置に使うなんて……私はそんなことのために仕送りしているわけじゃない」とキッパリ言うと、夫は激昂。

「離婚だ! 今から離婚届を取ってくる!」と言って、本当に離婚届を取りに行き、記入済みの離婚届を突きつけてきた夫。さらにその際に「養育費を払わないことを受け入れれば親権を渡す」と念書まで書かされたというから悪質です(養育費を払うのは親の義務ですが、不払いを取り締まる法律はなく、取り決めしようにもこのように難しく、取り決めをしたところで不払いの養育費を差し押さえるのは困難です)。

 
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