全世界的に人工肉(代替肉)に対する注目が高まっています。以前はベジタリアンなど一部の消費者向けというイメージが強い商品でしたが、ここ数年で状況は一変しました。近い将来、多くの消費者が、望むと望まざるとに関わらず人工肉と向き合うことになる可能性が高いのですが、その理由は何と脱炭素問題なのです。

 

人工肉とは、文字通り人工的に作り上げた肉製品のことで、大きく分けて2つの種類があります。1つは植物由来の素材で作った肉(に見える食品)で、もう1つは動物の肉を人工的に培養したものです。以前は、人工肉と言えば、肉の味や食感を持ちつつも、基本的には植物から作られた食品のことを指し、主にベジタリアンや健康を気にする消費者に向けた商品でした。

つまり人工肉はあくまで限定的な市場だったわけですが、ここ数年における世界経済の流れが人工肉市場を大きく変えることになりました。キーワードは経済成長と脱炭素です。

人工肉と世界経済、脱炭素がリンクしているのは、このまま、肉の生産を続けると、地球環境が破壊されるとともに、食糧難が発生する可能性が高くなっているからです。

肉を生産するためには莫大な資源が必要となります。牛肉を生産するには、大量の牛を育てなければなりませんが、牛はすさまじい量のエサを食べますから、多くの穀物も育てなければなりません(牛肉1キロを生産するために10キロの穀物が必要となります)。米国の中西部にあるコーンベルトと呼ばれる穀倉地帯ではコーン(とうもろこし)がたくさん生産されていますが、その多くは、食用ではなく牛のエサとして消費されます。

世界では今も満足に食べ物を食べられない人たちが多数、存在しているのですが、仮に牛の飼育をやめ、飼料に用いている穀類を人間が食べれば、たちどころに食糧難が解消するとまで言われています。そのくらい牛の飼育には多くの資源が必要なのです。

 
  • 1
  • 2