ESGに配慮しないとどうなるかという事例としてよく語られるのが、2013年4月に起こったラナ・プラザ崩落事故です。バングラデシュの首都ダッカ近郊で複数の縫製工場が入った複合ビルが崩落し、死者1138人、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きたのです。

ウイグル問題から考える、SDGsに配慮した消費のカタチ_img0
ラナ・プラザ崩落事故の発生当時の様子。写真:AP/アフロ

報道によれば、この建物は2007年に建設後、違法に建て増しされ、強度に問題を抱えていました。事故前日にも外壁にひび割れが見つかり、工員が不安を訴えたにもかかわらず、工場経営者らは「逃げたら給料は払わない」と脅し、勤務につかせたといいます。

 

事故後、工場経営者やビルの所有者が逮捕され、またこの工場がベネトン、マンゴーなどの欧米ファストファッションブランドの下請けになっていたこともあり、これらの企業が被害者への基金を設立。事故を契機にH&Mやベネトン、UNIQLOを展開するファーストリテイリングなどが「バングラデシュにおける火災予防及び建設物の安全に関する協定」(通称アコード)に調印しました。

ラナ・プラザの事故を契機に、ファッション業界に問題がようやく認識されたわけですが、これでバングラデシュや他の途上国の労働環境が全て改善したとはもちろん言えません。また、本来は惨事が起こって犠牲者が出てからではなく、そもそも起こらないような運営の仕方を考えなくてはいけない。

こうしたことが企業の社会的責任であると認知され、また2015年9月の国連サミットでSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)が採択されたこともあり、投資する側もこれを強く意識しはじめているというのが最近のトレンドと言えると思います。

人権に配慮した企業にお金が入るように、消費者としても目配りをしたい。メディアは人々が投資や消費をする判断材料になる情報をどんどん出していく必要があると感じています。

前回記事「「これ、おかしくない?」新生活での理不尽に意見することの意義」はこちら>>

 
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