目は、話を聞いていません。見た目の印象から、先入観で人を判断してしまう。もちろんそれは人間が生きていく上で、大事な働きです。遠くから見て、あるいは出会い頭に、相手が敵でないかどうかを見極めるには、見た目に基づいて瞬時に判断を下す必要がありますから。過去の経験で学習したデータに照らして「こいつは危険だ」「安全だ」と判定する。でも、社会生活の中では「らしさ」という固定概念も学習してしまいます。だからぱっと見て「女らしくない、男らしくない」「若者らしくない、アナウンサーらしくない」とジャッジしてしまうのでしょう。視覚でのコミュニケーションはバイアスが強いのです。
まだまだルッキズムの強い日本では、女性が人前に出て物を言うと必ず容姿をジャッジされます。あなたの職場でもそうではないですか?男性は不見識なことを言っても許容され、女性はその横でにこやかで従順であることを期待される。常に美醜を取りざたされ、見飽きたら取り替えられます。
音声メディアでは、その人の外見ではなく、態度で判断されます。マウンティング癖のある人や、他人の話を聞かない人はすぐにわかってしまうのです。その点では、耳は目よりもはるかに敏感で厳格です。
これから成長すると言われている音声アプリや音声SNS。知名度や容姿、突飛な行動で注目を集めるインフルエンサーが跋扈する「目を奪ったもん勝ち」の世界に疲れ果てたら、音でつながる関係にホッとするかもしれません。
前回記事「「教えてZ世代」の若者搾取にモヤる理由【小島慶子】」はこちら>>
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