清原果耶主演のNHK朝ドラ『おかえりモネ』がスタートしました。19歳ながら数々の作品で実績を積んできている彼女だけに、その凛とした爽やかな演技には、早くも「さすが」の声が多く上がっています。しかし私がそれ以上に注目したのが、彼女が演じるモネが時折見せる暗い表情。これが実にリアルで、まさに私が10代の頃、常に抱えていた鬱屈感そのもの!と、若かりし頃を思い出してしまったほどです。
ピュアな爽やかさと薄暗い闇。
朝ドラの新ヒロイン像に期待大
物語は、宮城県気仙沼市に近い島で育ったモネ(清原果耶)が、気象予報士を目指し、やがて故郷に戻り仕事を通して人々に幸せを届けていく、というもの。
ところが始まったばかりの第1週は、なぜかモネは海に囲まれた故郷にはおらず、山深い内陸で働いています。どうやらモネは3年前の東日本大震災のときに、たまたま故郷を離れており、自分は何も役に立つことができなかったという複雑な思いを抱えているよう……。だけどモネはまだ18歳。自分に何ができるのかも見つけられないし、見つける術さえもまだ見出せていない、という状態です。
おそらくこれまでの朝ドラヒロイン同様、モネも、真っすぐに未来を夢見るとても良い子だと思います。が、ちょっと違うのは、ピュアな中にもその一抹のモヤモヤが厳然と居座っており、どこか薄暗い空気もあわせ持っていること――。
これは震災という特別な経験をしたモネに限らず、誰もが持っている人間の両面性だと思います。“ピュアな闇”とでも言いましょうか。そしてモネがこの“ピュアな闇”と向き合っていくことが、今後の物語の主軸となっていくものと思われます。
……と言ってしまいますと、「要するに自分の中の負の感情を乗り越える話だよね」となってしまうかもしれません。たしかにそう言われてしまえば、私が言いたいのはそういうシンプルなことだと思います。
ですが、この“ピュアな闇”をドラマや映画で描くとなると、非常に難しい。
なぜなら、“ピュアさがメイン軸としてありながらも同時に程よくリアリティのある闇を表現できる役者”なんて、ハッキリ言ってほとんどと言っていいほどいないからです。大抵は、ピュアさが過剰になって嘘くさいいい子ちゃんになったり、反対に闇が勝ってただの困ったちゃんになってしまう。どちらも、視聴者が全く共感できない存在になってしまうのです。
前置きが長くなりましたが、つまり言いたいのは、清原果耶はこの“ピュアな闇”を完璧に体現できる奇跡の女優さんだということです。
多くの方がご存じだと思いますが、清原果耶が初めてお茶の間に登場したのは、あの大ヒット朝ドラ『あさがきた』の女中・ふゆ役です。器量も性格も良いものの、父親から「犬猫のほうがマシ」と尊厳のない育てられ方をしたふゆは、かすかにあさに対するひがみのようなものを漂わせています。やがてあさの夫である新次郎に恋心を抱くようになり、「妾でもいい」と懇願するも、新次郎に「もっと自分を大切にしろ」と諭され涙するのでした。
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