老化の25%は遺伝情報によって規定されると考えられていますが、残りの75%は何なのでしょうか。前回は高血圧、糖尿病、喫煙などの「血管危険因子」が老化の原因の一つだという米国の研究についてお話しましたが、英国でも同様の研究が行われています。

 


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経済状況が良いほど加齢は「成功」する


この研究では、約6000人が17年にわたって追跡調査をされています(参考文献1)。重い病気にかからず、身体や認知の機能が維持された状態を「成功した加齢」と捉え、どういった人がそのような状態を達成できたのかを観察しているものです。

すると、最も大きく影響を及ぼしていたのは30代から50代にかけての経済状況でした。経済状況の良い人ほど「成功した加齢」と関連をしていたのです。この研究では、年収が100万円程度の人から2300万円程度の人までが含まれていましたが、年収が一番低いグループと年収が一番高いグループでは大きな差が見られました。

また、経済状況の因子を取り除くと、喫煙なし、健康な食生活、運動のほか、女性では程よい飲酒(ビールで1日350mlまで)、男性では職場での上司や同僚からのサポートが「成功した加齢」と関連していました。

 

社会経済的な地位と健康との関連は他にもこれまで様々な研究で指摘されてきていますが、経済状況が良いことは生活水準の改善、医療アクセスの向上につながりやすいこと、またより迅速に健康的なライフスタイルを取り入れやすい傾向となることも知られています(参考文献2)
こうしたことが積み重なって老化とも密接に関連しているのかもしれません。


30代から50代というのは、多くの人にとって大きな病気もなく体調の変化にも
気がつきにくい時期かもしれませんが、この時期の蓄積が、実は老後の変化に大きな影響を与えている可能性があると考えられます。


「体調がいいから」「症状がないから」という直感はあまり当てにならないかもしれず、やはりこの時期から健康的な習慣を構築しておくことが重要となるようです。

 

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参考文献
1    Britton A, Shipley M, Singh-Manoux A, Marmot MG. Successful aging: The contribution of early-life and midlife risk factors. J Am Geriatr Soc 2008; 56: 1098–105.
2  Pappas G, Queen S, Hadden W, Fisher G. The Increasing Disparity in Mortality between Socioeconomic Groups in the United States, 1960 and 1986. N Engl J Med 1993; 329: 103–9.

構成/中川明紀
写真/shutterstock


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