瀬戸 僕は自分のためだけに頑張れないんですよ。父親とか母親の顔を浮かべると、いつもより頑張れる気がする。だから、家族のために頑張っているのかな。自分のためだけにやっていると、ついこれくらいでいいかと甘えちゃう気がするので。
――そういう大切な存在がいるからこそ、優しくありたいと思う。
瀬戸 コロナになってみんな当たり前が当たり前じゃないということを思い知ったと思うんですね。それを忘れちゃいけないなと。みんな大切なことほど簡単に忘れてしまう。
僕がTwitterで毎朝「おはよう」とつぶやいてるのも、熊本の地震のときから当たり前が当たり前じゃなくなったと思っていて。今日を迎えられたことはとってもありがたいことで、それは決して当たり前じゃないんだということを自分に刻み込まなきゃいけないと思ってつぶやいているんですけど。
家族にしても、友達とか、一緒に働く相手とか、どんな人が相手でも優しさを忘れないことがいちばん大切じゃないかと思います。
縮こまってしまったら、その人らしさが消えてしまう
――人を傷つけないってすごく難しいですよね。身近な相手もそうですし、瀬戸さんのように不特定多数の人から見られる仕事をしていると、自分の些細な言動が人を傷つける可能性もある。
瀬戸 それは本当に感じます。ただ一方で、全く誰も傷つけない、ということの難しさがあるのも確かで。これはずっと考えていくことなのかなと思います。
――原稿を書く立場でも日々感じます。こういう書き方をしたら誰かが傷つくだろうかとか。
瀬戸 わかります。でもそうやってどんどん縮こまっていったら、その人らしさが消えていっちゃう。それだと面白くないですよね。
もちろんこれをしたら人が傷つくとわかってやることは違うので、それはやらないですけど。自分がこうしたいと思ったことなら、それはやりたいし、やっていきたいです。
――では最後に聞かせてください。エンタメに社会を変えていく力はあると思いますか。
瀬戸 あるんじゃないですかね。だから僕はこの仕事をやっているんだと思うし。
大勢の人じゃなくてもいいと思うんですよ。作品を観て、誰か一人でも変われば、その変化が徐々に周囲に浸透していって、やがて大きな変化につながる可能性がある。そう信じているので、コロナでエンタメは大きなダメージを受けましたけど、絶対立ち止まりたくない。この状況の中でやれることを探すことが自分たちの使命なんだと強く感じています。
<作品紹介>
WOWOWオリジナルドラマ『男コピーライター、育休をとる。』
広告代理店に勤めるコピーライター・魚返洋介(瀬戸康史)は、妻・愛子(瀧内公美)から妊娠を告げられる。喜びのなか、あることをきっかけに6ヶ月の育児休業の取得を決意するも、半年というのは社内でも前例のない長さ。魚返は綿密な移行プランを立てて上司の浜崎(村上淳)に育休を申し出るが……。そして娘の誕生に感激するのも束の間、次々に難題が降りかかる波乱の日々が始まる。7月9日(金)より放送・配信スタート。
放送:WOWOWプライムにて、毎週金曜23時〜(全6回)。第1回は無料放送。
配信:WOWOWオンデマンドにて、第1回放送終了後より全12話一挙配信スタート。
【無料トライアル実施中】WOWOWオンデマンドでは放送に先駆けて、第1・2話を配信。6月25(金)17時〜。
撮影/塚田亮平
スタイリング/小林洋治郎 (Yolken)
ヘアメイク/須賀元子 (星野事務所)
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
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