ミモレのSNAPでも人気のアーセンスディレクターの梅本愛子さん。この度、梅本さんが初挑戦したという”無染色”の服作りとそのきっかけについて語っていただきました。
「無染色の素材を使ったものづくりをしてみたい。と思い立ってから、約半年。ようやくAresenseの夏物アイテムで実現することができました。今回はファッションエディターの小林文さんとの企画で、文さんにお力添えをいただきながらの贅沢な企画。
初夏の今にぴったりなので、是非ご覧いただきたく今回はなぜこのアイテムを作ったのかというお話を。
おうち時間が増えた昨年夏頃、子供と家で使い古しの服を染めることにはまりだし、いい色の出そうな染料を冷凍してストックするような不思議な習慣が始まりました。
ここでいう染料とは、庭に落ちている色づいた落ち葉や、料理に使ったムラサキキャベツの皮やアボガドの種、ドリップ後のコーヒー豆のかすなど、家庭から出る「普段だと廃棄するだけ」のもの。
意外な色に染まる楽しさや、天然の色のバリエーションに感動し息子ともどもすっかり草木染に魅了されました。
左がムラサキタマネギ。煮だしたときは綺麗な紫色なのに、染めると黄色くなります。真ん中は巨峰の皮と種で、右はアボガドの種。
なぜ?という色に染まったりします。植物の色素は奥が深いです……。
ただその反面、この小さな子供服1枚染めるだけでこんなに水を使うのか……とぞっとしたのも事実。仮に環境に配慮された染料を使っていても、水を無駄遣いしてしまうのは避けられないのだとわかりました。
後日お世話になっている染工場の方からお話を聞いて、染料で糸や製品を染める時も同じく大量の水を使うこと、染色に使った水を綺麗な水に戻すためにやっている作業と、それにかかる年月を伺い、私はまだまだ服作りで何となくしか理解していないことがたくさんあると反省。
染色せずとも皆に必要とされ環境にも負荷が少ないものづくりは、いつしかチャレンジしたいテーマの1つになっていました。
今までも、Aresenseを通して残反を使用したものづくりや、国内少量生産にこだわるなど、アパレルが引き起こしている環境問題に対して少しずつでもアクションを起こし、従来の洋服の作り方を当たり前にしないことを意識してきました。
洋服屋なので、新しい洋服を全く作らない選択肢はないのですが、作る過程で大きく犠牲になるものがあるのは、代替えの手段でその負荷を減らす必要があるし、そのほうがクールと思われ、選ばれる世の中でなければならないと思います。
とはいえまずは洋服なので見た目、可愛さで注目されることはマスト!
ということで、小林文さんに協力してもらいました。理想は『無染色と知らずにアイテムとして純粋に気に入っていただき、実はその生産過程も魅力的だった』という流れです。
小林文さんは、ファッションセンスのみならず色々なもののセンスを持ち合わせた素敵な女性。
作る過程は素晴らしくても、世に出して残ってしまうのは本末転倒だなと感じたので、文さんのセンスで無染色のものづくりを成功させたいなと思ったのです。
無染色のものづくりの難しかったところは、文字通り無染色なのでカラーバリエーションが作れるわけでもなく、やり方を間違えると質素で注目されないアイテムになってしまうというところです。
とはいえ、生地そのものに加工を施したり部分的にも染色した布を使ったりすることは今回の主旨に反するので避けたい……。
そこでこだわったのは、無染色の生地選びとデザイン。
無染色素材はたくさんありますが、中でも綿と麻のMIXされたやや厚手のサマーツイード風の素材をセレクト。適度な厚みがありハリもでるので、きれいなシルエットが作れると思いました。
MUSENSHOKU SHIRT
シャツは、夏にデニムと合わせても上品に仕上がるよう、肩の切り替え位置やネックの詰まりを最後まで微修正。後ろのタックで全体的にAラインのシルエットを構築し、シンプルながらも一癖あるデザインに。
MUSENSHOKU DRESS
ワンピースは、靴を選ばず一枚で使うことができるよう、ロング丈に。大きめのポケットや甘くなりすぎないウエスト切り替え位置など全体のバランスにこだわり修正を重ねました。バストや身幅をすっきり見せるパターンにこだわりナチュラルになりすぎずほどよい「きちんと感」を演出。
文さんの力で、『可愛いなと思ったアイテムがたまたま無染色だった』というような理想の流れが作れたことにとても満足です。
この1着を選ぶことが皆様にたくさんの意味をもたらすことができたらそれほど嬉しいことはありません」
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