子育て後、同じ企業に戻れた場合でも、女性は「勤続年数が短くなるので、年功序列制の残っている現状では、賃金は低くなる」。さらに「子育て後に他の企業に移った場合でも、新しいスタートとなるので、賃金は低くなる」という厳しい現実が待ち受けています。

また、男女間の賃金格差は“非正規労働”という働き方とも深く関与。企業は正規労働者よりもコスパの良い働き手として、非正規労働者の数を増やしてきましたが、その大半は女性でした。橘木さんは「既婚女性の中には、パートタイムなどの労働を望む人もいるので、差別でない側面も多少はあるが、非正規女性労働の存在は(男女間の賃金格差に)影響している」と語ります。

非正規社員は、正規より年収が60%も低い

 

コロナ禍の不況では、女性の非正規労働者が深刻な状況に置かれたことも問題となりました。そこで、正規と非正規の格差の実態についても本書から見ていきます。

 

ここでいう正規社員とは、フルタイム労働で雇用されている正社員のこと。一方の非正規は、①パート労働に代表されるように労働時間が短いもの、②雇用契約期間が設定されているもの、③派遣社員、④学生などに代表されるアルバイト労働、などさまざまな形態があります。

1992(平成4)年から25年間の動向を見ると、1992年には女性の39.0%、男性の9.8%、男女計21.5%が非正規労働者であったのに対し、バブル崩壊後の21世紀には「女性の過半数が非正規労働者となったし、男性でも20%を超え、男女計でじつに約40%の人が非正規労働者となった」と本書は示します。

何より問題なのは、正規・非正規の格差が給与差として顕著に現れたこと。2019(令和元)年の「民間給与実態統計調査」によると、「男性の正規労働者で年収が561万円、非正規労働者で226万円、女性の正規労働者で389万円、非正規労働者で152万円である。男女計にするとそれぞれが503万円と175万円となる」とその差は歴然。橘木さんは「非正規の人は正規の人と比較して、年収で男性も女性も60%近くも低い」と言い換え、深刻な格差を強調します。

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「非正規割合の推移」と「正規・非正規別の年収・収入データ」
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※本書P99より