昨年11月に童謡コンクールで歌った「いぬのおまわりさん」の動画が注目されてから半年あまり。今や数々のテレビ番組に出演し、次々とCMにも起用され、CDさらには写真集も発売と話題沸騰の“ののちゃん”。みなさんもきっとご存じでしょう。
彼女を史上最年少でCDデビューさせた、この道30年、音楽業界屈指の敏腕女性ディレクターのお話。ちょっと気になりませんか?

写真/小川晃代・湯沢祐介


レコーディングキャリアは千曲以上!
「時代を記録したい」


キングレコードのディレクター渡辺有賀(わたなべ・ゆか)さんは、2014年8月の豪雨による大規模土砂災害でニュースの中心地となった広島県広島市安佐南区の出身。「中心地から離れた郊外の町です。でも中学のずっと後輩に女優の綾瀬はるかさんがいるんですよ」と笑いながら、自身のキャリアを話してくれました。

 

「子どもの頃から音楽が好きでした。3歳からピアノを習い、中学、高校と吹奏楽部。
音楽の先生になりたくて、地元の大学の教育学部音楽科に進みました」

キングレコードのディレクター渡辺有賀さん。

「ずっと教師になることを夢見ていたのに、4年生の教育実習でつまづきました。指導案に忠実に授業をするのが苦手だったんです。
子どもたちが興味を持ってくれるように自由な発想でやりたくて指導の先生に呆れられてしまい、教員は向いてないのだろうな、と思うようになりました。
ただ、親には「教員採用試験だけは受けてくれ」と泣いて頼まれて。試験の勉強はしていなかったので暗記しないと解けない問題はさっぱりでしたが、自由記述は教員を目指していた頃の自分を思い出して用紙いっぱいに書きました。
それがよかったのかどうか、高倍率の一次試験に合格。
しかし、選んだ就職先は日本で最老舗のレコード会社、日本コロムビアでした」

就職のために上京し、アシスタント・ディレクターとして社会人をスタート。
「当時はレコード会社も自社スタジオを持っていて、毎日のように朝まで録音をしていました。ディレクターになるためには厳しい修行も待っていましたが、音楽を録るという仕事はとても魅力的で充実していましたね。
私の所属部署は幅広いジャンルの音楽を扱っていましたが、その中で特に自分が力を注いだのが子どものための音楽制作です。
以来今までに、楽曲数としては千曲以上レコーディングしていると思います」

制作者として20年勤務した後、古い音源や資料を生かすためのセクションに異動。

「音楽史の研究家が訪ねてくるようなその部署で初めて蓄音機が奏でる音楽を聴かせてもらった時、空気を震わせて伝わる音を体感して感動しました。目の前で歌っているかのような立体感があったんです。
蓄音機に魅了された私は、当時起こった東日本大震災後の仮設住宅で電気を使わないコンサートを開こうと、蓄音機を借りて仲間と一緒に東北に行ったりもしました」

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【全国民を癒やす2歳の歌姫ののちゃん】
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