静岡県熱海市で大規模な土石流が発生するなど、各地で大雨による被害が相次いでいます。熱海市の場合、盛り土の問題が指摘されていますから、人災である可能性が濃厚ですが、それでも記録的な大雨がなければ、ここまでの被害には至らなかったでしょう。
災害が起こる度に、事前に予測できなかったのか、という声が上がりますが、最近はどういうわけか、こうした意見に対しては「日本は災害大国なのだから仕方がない」「批判など誰でもできる」などバッシングされるケースが多いようです。確かに何でも批判すればよいというものではありませんが、本当に仕方がないことなのでしょうか。
ここ20年、大雨による被害が急増しているのは確かですが、その原因のひとつとされているのが気象条件の変化です。日本列島に降る雨の総量そのものは、上下変動はあるものの、長期的に見て大きくは変わっていません。しかし、1時間あたり50ミリ以上の大雨が降る頻度は着実に増えています(5年移動平均で見ると2000年は300回程度でしたが、最近は350回を超えています)。
雨の総量は変わらないのに、大雨が降る頻度が増えた理由のひとつとして考えられるのが気温の上昇です。多くの人が実感していると思いますが、日本の平均気温は毎年着実に上がっており、日本列島の夏は厳しさを増しています。これは日本だけでなく世界的な現象であり、地球全体が暑くなっていると見て差し支えありません。
平均気温が上がると、地面や海面の温度が上がり、上昇気流が発生しやすくなります。加えて、偏西風が流れる場所が変わり、西日本上空に前線(暖かい空気と冷たい暖かい空気が接する場所)が停滞しやすくなっているとの指摘も出ています。前線は雲の発生を誘発しますから、ここに激しい上昇気流が加わると大雨が降りやすくなります。梅雨の時期に被害が多発するようになったのはこれが原因と考えられます。
8月に入ると日本列島には次々と台風がやってきますが、台風による被害が拡大しているのも、気温上昇が原因とされます。台風は上昇気流によって発生する極端な低気圧ですから、海面の温度が高いと大型化する傾向が顕著です。全世界的に温度が上昇していることから、台風も大型化し、それに伴って被害も大きくなっているのです。
実はこうした変化は20年近く前から指摘されてきたことであり、今になって初めて分かったことではありません。治水などの対策はすぐに実施できるものではありませんから限界はありますが、20年近くの時間があったわけですから、何らかの対策を行うことは不可能ではなかったでしょう。
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