「どうせ離婚するならDVなんてあってもなくても関係ないでしょ?」と言う裁判所


夫と協議離婚をすることは無理だと悟ったDさん。

そこで離婚調停を申し立てます。しかしここからはお決まりのコース。

「一度どうしても謝罪したい」という相手の要望を受け入れるよう調停員に諭されたDさん。夫と同じ部屋に通され、みんなが見ている前でDさんがされたのはなんと夫からの土下座。自分を殺そうとした相手から土下座されても、殺されかけた方は惨めなだけ。たまったものではありません。

そして調停期日の度、夫は(裁判の)相手方の待合室で待つよう言われても聞かずに調停室前の通路をウロウロし、Dさんを執拗に待ち伏せました。

そのため調停室へ移動することさえできない状況に陥り、最終的には調停員が別室を用意し、そこで全ての手続きを終えるはめになりました。Dさんは最初から弁護士をつけていたので、その辺りは比較的丁寧に扱ってもらえたといいます。相手の土下座謝罪を受けたことに関しても「がんばりましたね」と声をかけられたほど。

 

しかし、パフォーマンスだけで反省していない夫は離婚に同意せず、調停自体は3回で不調。即、裁判を申し立てたDさんですが、同時に夫から面会交流調停を起こされた挙句、自弁からも「面会させないと離婚にも親権にも不利になりますよ」と言われてしまいます。仕方なく弁護士さんに同伴してもらい面会交流に付き添い、自分を殺そうとした相手と子どもの面会をみまもる苦行に耐えること数年。

 

離婚裁判自体が拗れて長引いたため、最後の切り札と婚費請求を申し立てたDさん。(婚費<こんぴ>とは婚姻費用のこと。夫婦のうち収入の多い方が少ない方の扶養義務を有しており、加えて主たる監護親に対しそうでないほうが養育費と同じように子どもにかかる費用も含め支払わねばなりませんが、自主的に支払ってもらえないときには婚姻費用請求調停を申し立てる必要があります)。

そこでようやく相手は離婚に応じる姿勢を見せたようで、裁判官が和解をすすめてきたといいます。Dさんが提示した最低限の養育費のさらに半額で手を打たされましたが、控訴しようにも関東の高裁は東京にしかありません。地方在住のDさんにはハードルが高く、泣く泣く和解に応じることになり離婚が成立したのでした。

そして残ったのが面会交流。
もちろんDVのことは何度も調停員に言いました。
しかし毎回「DVがあってもなくても離婚したいんだから関係ないでしょ」と耳を貸してもらえない。そしてDVを考慮せず繰り返される面会交流の話。仕方なく最初は弁護士さんにお願いして面会交流に立ち会ってもらったものの、面会交流に対する夫の身勝手な行動は度を越していました。

いくら「やめてくれ」と言っても持ってくる高額なプレゼント。面会時間を延ばそうとする画策。息子が一緒にトイレに連れていかれる時も「無事に生きて帰ってくるか」不安で不安でたまらない気持ちにさせられるDさん。

調停中からその態度だったので、調停員に何度も現状を訴えたといいますが、それでも結局決まってしまった年に数回の面会交流。そうして第三者機関へと立ち合いを依頼することになったのですが……

現在、元夫の身勝手のせいでDさんは第三者機関から面会交流のサポートを打ち切られるという窮地に追い込まれています。しかし裁判所から面会交流するようにと決められていることにはかわりなく、そして支援機関は支援打ち切りの理由や、面会交流中の父親の異常な行動に対して裁判所に対しての証言をしてはくれません。

「どうすればいいのかわかりません」

と途方にくれるDさん。

残念ながら、ここまで様々な方に取材を重ねてきた私にもどうしたらいいのかわからない。

信じられないことですが、つまり解決方法は、どうやら“ない”ようなのです。
 

前回記事「「大人の言うことを聞く子になって」DVから守るため、唯一、母が我が子に求めたこと」

 
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