高齢者のうつ病は、スポットライトの当たりにくい、しかし見逃すことのできない重要な問題です。

特に持病を抱えた人に多い問題であり、脳卒中や心筋梗塞など、特定の病気をもった高齢者では4割を超える人にうつ病があったことを報告する研究もあります(参考文献1)

 


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新型コロナウイルス感染がきっかけに


実際、私の外来にもそのような患者さんはたくさんいらっしゃいます。

例えば70代の患者さん、Hさんのストーリーをご紹介します。Hさんはもともと社交的で、外出もよくされていて、友人も多い方でした。ところが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに外出する機会がめっきり減ってしまいました。奥さんによると、自宅では夜遅くまで映画を観ることが多くなったようです。

 

また、感染には十分注意して、外出は買い物だけという状況だったようです。しかし、運悪くご夫婦そろって新型コロナウイルスに感染してしまい、奥さんとともに入院することになりました。

Hさんは一時は集中治療室に入室し、命も危ないという状況に至りましたが、治療の甲斐もあってなんとか危機的な状況は脱し、退院することができました。しかし、長期にわたる闘病生活のため、足が不自由になってしまい、退院の時は車椅子に乗る状態。外を歩き回る体力は失ってしまいました。

 
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