前回、持病を抱える高齢者はうつ症状が出やすいというお話をしました。そもそも、年齢を重ねるにつれて喪失感や悲しみを感じるライフイベントというものは増えていく傾向にあるかもしれません。

家族を亡くしたり、仕事を退職したりといったライフイベントは人生の後半にこそ重なる傾向にあるでしょう。配偶者を失い、突然独り身になることだってあります。あるいは退職して社会的な立場や収入を失うことになり、将来への不安を感じるかもしれません。

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このような喪失が悲しみや孤独の感情につながりやすいのは間違いありません。それがうつ症状の引き金になることも確かにあります。しかし、誤解をしてはいけないのは、これだけでうつ病を発病するわけではないということです。

 


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加齢に伴う脳の変化もうつ病の要因に


実際、このような喪失がありながらも、特に持病などのない健康な高齢者は、むしろ一般成人よりもうつ病の発症頻度は低いことが知られています(参考文献1)

では、どのような人がうつ病を発症しやすいかというと、次のような要因がうつ病の発症率と関連することが報告されています(参考文献2)

うつ病の発症と関連する因子
女性(男性と比較して多い)
社会的孤立
配偶者との離婚や死別
慢性的な持病
コントロール不良の痛み
不眠
身体的な障害
認知機能の障害

これらの危険因子が積み重なり、さらに加齢に伴う脳の変化などもあいまって、発病することになります。

高齢者のうつ病の発症には、加齢によって生じる脳の萎縮や小さな脳梗塞の積み重ねが関連している可能性を示唆した報告もあります(参考文献3)

また、大きな脳梗塞後にうつ病の発症が多いことも知られており、発症リスクは発症後2年以内に多いことも報告されています(参考文献4)。大きな病気を患った後というのは、その病気自体に本人も周りも気をとられやすく、うつなどの症状が見逃されやすいので注意が必要です。

さらに、認知症とうつ病の関連性も指摘されるようになってきています。どうやらアルツハイマー病をはじめとする認知症の原因疾患の合併症として、うつ病を発症することもあるようなのです(参考文献5)

 
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