これまでせん妄の症状や原因についてお話しました。では、どのように予防や治療をすれば良いのでしょうか。

せん妄の予防はとても重要です。せん妄が本人の苦痛を増やすからというだけでなく、せん妄の発症が、入院期間の延長、身体機能や認知機能の悪化、死亡率の増加、自宅に帰れない可能性の増加と関連することが知られているからです(参考文献1)。せん妄は、これだけ多くのマイナスの結果とつながり得るのです。

 


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ストレスを取り除くことが予防になる


効果的に予防をするためには、これまで紹介してきたようなせん妄のリスクを様々な方向から取り除く工夫が必要になります。それは、入院した人の「ストレスを取り除く工夫」と言い換えることもできます。

例えば、医療者としては、不要な検査や点滴を行うことを避け、夜の睡眠をしっかりととれるように配慮をする必要があります。

医師や看護師が、患者さんに「今日は何曜日ですか?」「ここはどこですか?」といった質問をしているのを見たことがある人もいるかもしれません。毎日繰り返しそのような確認をすることには、実はせん妄予防の意味合いもあるのです。

 

また、カーテンに囲まれた病室では、時間の感覚が分かりづらくなってしまうため、日中はなるべくカーテンを開けて日の光を取り入れたり、病室に時計やカレンダーを置いて、時間や日付を確認できるようにする工夫もあります。

あるいは、病状が許すのであれば、早期からリハビリなどで体を動かすことで、1日のリズムが作りやすくなります。

可能であれば家族が頻繁に面会をして日中に話をする、メガネや補聴器が必要な方であれば、自宅で使っているものを持参してもらい、使ってもらうなどの計らいも大切です。

そして、これは医師の腕の見せどころですが、隠れた感染症、痛みや便秘などを見落とさずにきちっと管理するのも大切です。

 
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