アメリカでは、秋以降、12歳未満の子どもにもワクチン接種の可能性が出ているといいます。日本では12歳~15歳へのワクチン接種券の発送が進んでいますが、どのように考えたらいいのか、山田悠史先生にききました。
Q. 12歳の娘に、ワクチン接種券が届きました。子どものワクチン接種をどのように考えればよいでしょうか?
私たちの2020年以降の生活を大きく変えてしまった新型コロナウイルス。残念ながらこのウイルスが地球上から今後消えてなくなる可能性はほとんどないと言っていいでしょう。このことから、私たちは、この先もこのウイルスと長い間付き合っていかなければならないことになります。
しかし、私たちはこういった病原体との付き合い方を知っています。私たちは幼少期にお母さんから抗体をもらい、何度もさまざまなウイルスによる風邪をひき、数多くのワクチンを受けることで免疫を獲得します。そうすることで、ありふれた大抵の病原体には負けないからだを作ることができます。免疫が機能して、感染、重症化を防いでくれるのです。
しかし、新型コロナウイルスはこういった病原体とは異なり、全く新たに誕生した病原体です。当初、世界中の誰にも免疫はありませんでした。現在は過去に感染した人やワクチン接種を受けた人には程度の差はあれ免疫がありますが、それ以外の人には残念ながら相変わらず全く免疫がありません。
免疫が全くないまま、新たな病原体に感染するというのはリスクの高いイベントです。獲得免疫というのは、いわば凶悪犯に対する特殊部隊のようなものです。免疫のない人にも、交番のお巡りさんのような標準装備はあるものの、凶悪犯に対してお巡りさんだけで立ち向かっていかなければならなくなります。
お子さんは、待っていれば成長する間にこの病原体に免疫ができるというわけではありません。「免疫力をつける食事法」などという宣伝を目にすることもあるかもしれませんが、その食事が新型コロナへの免疫を獲得させてくれるわけではありません。
免疫を獲得する方法は、一度ウイルスに感染するか、ワクチンを受けるかのどちらかの方法しかないのです。
繰り返しになりますが、このウイルスは世界から消えてなくなるということはないと予想されます。このため、皆がほとんど間違いなく風邪をひいてきたように、この新型コロナウイルスも今は大丈夫でもめぐりめぐって遭遇することになる可能性が高いと思います。
「とりあえずいま感染しなければ良い、ワクチンはまた将来考える」と思われるかもしれませんが、考えているうちに、ウイルスをもらってしまう可能性が高いということです。
また、お子さんは重症化リスクが低いというものの、重症化しないというわけではなく、後遺症に悩まされるお子さんもいます。幸い後遺症のリスクは大人に比べて低いようですが、それでも、これまでの報告によると100人に4人ほどの割合で1ヵ月以上続く症状に悩まされるようです(参考文献1)。
一方、ワクチンの重い副反応のリスクはアナフィラキシーで100万人に数人、心筋炎で100万人に数十人程度の割合と考えられています(参考文献2)。また、仮にかかってしまった場合にも命に別状はなく、後遺症を残さずに軽快されています。
また、多くの人にとって理解が難しいところかもしれませんが、ワクチンを受ける意義は接種を受けた本人にとどまりません。友達や学校の先生、家族を守る意義もあります。
そう考えた時に、ウイルスによるリスクが大人ほど高くないとはいえ、接種する意義が見えてくるはずです。
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