このところ毎日のように、記録的な猛暑が続いています。日本だけでなく世界各国の平均気温は毎年、着実に上昇しており、来年はさらに暑くなるかもしれません。最近は熱中症という言葉が完全に定着したこともあり、エアコンなどつけるべきではないと強く主張する人は少なくなりました(昭和の時代はエアコンは健康を害するという意見が結構、強かったのです)。

 

多くの人が温度を気にするようになったのは健康上、良いことだと思いますが、まだ欠けている視点があります。それは「湿度」です。実は湿度は温度以上に体感や健康状態に影響を与えます。猛暑をうまく乗り切るためには、湿度についてもっと敏感になっておく必要があるでしょう。

人間の体からは常に100ワット程度の熱出力があると言われています。この熱を外部に放出できなければ人は熱中症になり、最悪の場合、死んでしまいます。気温が20℃代半ばであれば、熱を容易に放出できますが、20℃台後半から30℃台になってくると、それがうまくいかなくなり、汗をかくことで体を冷やすという状態になります。

汗をかくと、水分が皮膚の上で気化して熱を奪います(気化熱)。気化することで熱を奪うというメカニズムは、以前、このコラムでもエアコン室外機に水をかけることの是非について論じた際に解説したことがありますが、湿度が高いと汗の気化がスムーズに進まず、熱を放出できなります。これが人間の快適さに極めて大きな影響を与えており、条件が悪くなると熱中症を引き起こします。

例えば米国の西海岸の一部地域や、砂漠が広がるラスベガスなどに行くと、気温が40℃近くになることもありますが、意外と暑さを感じません。それは湿度が極めて低いからです。一方、気温が36℃で湿度が100%の場合、そのままでは熱が放出できず、極めて不快に感じ、放置すれば、場合によっては死に至ることもあります(日本ではこうした条件になることは十分、あり得ると思います)。つまり、温度とともに湿度が重要なカギを握っているわけです。

電気代を節約するため「エアコンの設定温度は28℃に設定しましょう」などとよく言われますが、28℃の気温でも、60%の湿度がある状態では、かなり蒸し暑く、到底快適とはいえません。ところが気温が30℃でも湿度が50%を切ってくると、多くの人が、25℃くらいの気温だと勘違いするくらい快適になります。

筆者も試しに、真夏に窓を閉め切り、エアコンを付けず、除湿機をフル稼働させてみました。室内の気温は34℃くらいまで上がりましたが、湿度は40%台の状態です。確かにかなり暑いですが、思ったほど不快には感じませんでした(これはあくまでリスクを理解した上での個人的な実験です。湿度が低くても温度が高すぎれば害になりますし、湿度が低すぎると風邪を引きやすくなります)。

つまり室内の温度に加えて湿度をコントロールできれば、熱中症を防ぐこともできますし、何より快適に過ごすことができますが、問題はその方法です。

 
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