山手線で心肺停止…!「夏の心臓には危険がいっぱい」医療ライターが伝えたいこと_img0
 

コロナ禍&猛暑での我慢の生活が続いています。そんな中、「あれ、なんか胸のあたりが苦しい」と気になったことはありませんか。その不快感を「ただのストレス」「病院に行くのが怖い」「ちょっと我慢してれば自然に治る」と放置してはいけません。体や心へのストレスが、心臓までをも蝕んでいるかもしれないのです。
何を隠そう胸の痛みを放置して、心肺停止で救急搬送された経験を持つ私です。今はいわゆる基礎疾患持ちの身。最近、寝起きに胸の痛みで、慌ててニトロを舌下することがしばしばあり心配になりました。
そこで、今回は目には見えない心臓の病気の前兆の見極め方、心臓を守るためのポイントを私の主治医である遠藤彩佳先生(済生会中央病院・循環器内科副医長)に聞いてきました。

 


◆その1 こまめに水分補給
〜夏の暑さは心筋梗塞の引き金に! 


心疾患でよく知られているのは動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞。本来は60歳以上の高齢者が多くかかる病気です。特に女性ホルモンには動脈硬化を抑制する作用があるので、閉経するまでは、糖尿病や高脂血症などの基礎疾患や遺伝的な家族歴がない限り、女性で30代、40代で動脈硬化での心筋梗塞を発症する確率は1%以下。ところが、最近、若い人にも増えてきていると聞きました。

「心筋梗塞が起こる頻度の高い季節は寒くなってくる冬の12月〜2月。確かに、実はそれと同じぐらい夏で、特に7月、8月が多いです。心筋梗塞が起きる機序は、『血管の内側にプラークなどが付着→プラークが破綻して血栓ができる→血液の流れが悪くなり血管がつまる』。
冬と異なり夏は脱水になることが多いため、血液が濃縮されてドロドロになり、血栓ができやすくなるのです。若年層では、夏の方が心筋梗塞を発症する率が高い印象です。その他にも、脱水は不整脈の誘引にもなりますので注意が必要です」(遠藤先生)

脱水によって血液が濃縮されると血が固まりやすくなり、胸が詰まった症状が出ていたのです。人間は普通に生活していても皮膚や口呼吸で、体から無意識に1リットルぐらいの水分が抜けています。私は熱帯夜でもクーラーが嫌いなため付けずに寝ていたので、寝汗で朝はカラカラ状態になっていました……。心臓のためにも熱中症予防のためにも、室内でもこまめに水分補給を意識することと適切なクーラーの使用が大切です。ただし、飲むのは水かお茶がオススメ。スポーツドリンクは糖分が入っているので飲み過ぎはNG。


◆その2 ストレスは心臓の最大の敵
上手にガス抜きしよう


「基礎疾患がなくても若い方から高齢の方まで、強いストレスが加わると、心疾患を発症する確率が数倍高くなると言われています。日常生活でご自身やご家族が大きな病気になった、ご不幸があった、劇的な環境の変化あったなど、過度な精神的ストレスを受けたり、さらにそれで睡眠不足が続いたりすると、自律神経が乱れ、血圧も上昇していきます。それが引き金になって心筋梗塞や不整脈を起こす方もいらっしゃいます。実際に、救急車で運ばれて入院された方に何がきっかけになったのかを聞くと、「お子さんの受験」「離婚のゴタゴタ」など、やはりストレスでメンタルのバランスが崩れた時期に心筋梗塞を起こしている方も多いです」(遠藤先生)

更年期はホルモンバランスが乱れるのは言わずもがな。そして、いろんな悩みも抱える時期。お子さんの受験と、両親の看護・介護などで精神的なバランスも不安定になりやすい。そうなると動脈硬化だけでなく、ストレス性の血管攣縮(れんしゅく)が心筋梗塞の原因になることがあります。
私も冠攣縮性狭心症で倒れる1年前に母ががんで亡くなり、兄弟との軋轢が相当なストレスになっていました。

「ストレスで血管が痙攣する、血管が解離するといった原因で狭心症や心筋梗塞を発症する40代、50代の女性は多いです。重い場合は心室細動のような致死的不整脈で心停止など、場合によっては命に直結するリスクがあるので、決して無視はできません。その他にも、過度な心理的ストレスがかかると、一時的に心筋梗塞のように心臓の動きが悪くなる”タコつぼ型心筋症”というのがあります。東日本大震災や阪神淡路大震災などでは急増しました。コロナ禍の環境は、これまでにない過度なストレスが多くの人々にかかっており、心臓には良くないことばかりです。自粛生活の精神的ストレスに加え、リモートワークで通勤もなく運動不足。ずっと家にいることで体重が増え、コレステロール値もアップ。甘い物、煙草、お酒が増えた、不安で不眠が続いているなど、血管にも心臓にも悪影響が及んでいます。とはいえ、ストレスフリーになるのは難しいです。規則正しい食事や十分な睡眠をとり、なるべく散歩に出て体を動かしたり、好きなことをしてリラックスできる時間を設けたり、気分転換を心がけてください」(遠藤先生)

ただでさえストレス過多の現代社会を、更年期でやり過ごしているのに、そこに我慢を強いられるコロナ禍で二重苦、三重苦。ウイズコロナで息抜きするのは難しいことですが、私は猫たちと過ごす時間が心の癒しになっています。

 
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