最近、「家族でも友達でもない、ゆるいつながりの人間関係」に憧れを持つ人が増えてきています。それは、単なる“知り合い”ではなく、お互いに相手に対して親しみ感を抱きながらも、干渉しない関係です。
そんな「親しみ感のある、ゆるいつながり」には、具体的にどんな関係があるのでしょうか。また、そんな関係を築くために大切なことは何でしょうか。


家族でも友達でもないけど、ゆるくつながる関係

 

「親しみ感のある、ゆるいつながりの関係」には、どういったものがあるのかというと、例えば、「家族でも友達でもない人との同居」というケースがあります。
書籍『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(大木亜希子著、祥伝社刊)は、元SDN48のメンバーだった著者が実姉からの紹介で、ササポンという50代のおじさんの家で同居する実話です。
一見、「若くて可愛い女性が、見ず知らずのおじさんと同居するなんて!」と心配しそうな話ですが、このササポンがかなり人生を達観している特殊なタイプなので、危ない目に遭うこともなく、むしろ著者は、共同生活を通して、自己を取り戻していきます。
(※ただし、すべての男性がササポンのようなタイプというわけではないので、特に若い女性はマネしないほうがいいでしょう)。

 

この本を読む限りですが、同居といっても、「お互いに干渉しないし、食事すらも共にしないけど、たまに会話を交わすような関係」に過ぎず、つかず離れずの程よい距離を保っています。
ササポンも「あわよくば、関係を深めたい」なんて思いは一切なさそうで、彼にとっては、まるで“親戚の娘さん”を預かっているような感覚であり、当時28歳の大木さんが夢に向かってがんばったり、人間関係や恋愛に悩んだりする姿を見守っているのが好きなようです。
一方、大木さんにとっては、安い賃料で部屋を貸してくれ、時にアドバイスをくれる(親戚のような)おじさんがいることで、安心感を得ています。つまり、お互いに、どこか自分の足りないものを補い合っているところがあるのです。

実は、家族でも友達でもない人を自分の家に住ませている人が、私の周りにもいます。その人は60代のバリバリ仕事をしている女性なのですが、これまでも家の空いた部屋を会社の部下や知人から紹介された人に貸していて、今は同世代の女性と同居しています。その彼女が料理を作ってくれるので、助かっているのだとか。
おそらく、家族でも友達でもないからこそ、どこか遠慮し合えて程よい距離感が保てていて、楽なところもあるのかもしれません。
逆に、家族だと距離が近すぎるので、容赦ない言い争いをしてしまうこともあるし、友達同士だと放っておけないことも出てくるので、お節介を焼いてしまうこともあるでしょうしね。

同じ屋根の下で暮らさなくても、「親しみ感のある、ゆるいつながりの人間関係」は可能かもしれません。例えば、11月3日に公開予定の映画『川っぺりムコリッタ』(荻上直子監督)は、孤独な青年・山田(松山ケンイチ)が同じアパートの住人との交流を通して、社会との接点を見つけていく姿が描かれています。
山田は、「同じアパートに住んでいる」という共通点だけの、家族でも友達でもない人たちと、かけがえのない関係を築いていきます。
わざわざ「友達になろう」なんて思わなくても、ただただ同じ環境下にいる人たちとゆるく関わっているだけでも、関係が築かれていくことはあるのかもしれません。

誰もが気軽にチャレンジしやすい「親しみ感のある、ゆるいつながりの人間関係」が築ける典型の環境と言えば、シェアハウスです。ただ、家の間取りやどんな人が住んでいるのかによっては、現実的にトラブルが起こっています。
つまり、「家族でも友達でもない人との同居」は、思いのほか簡単なことではないのです。単に環境が揃えば可能というわけでなく、人によっても、向き不向きがあるでしょう。

では、「ゆるいつながりの人との同居生活に向いている人」とは、どういう人なのでしょうか。それについては、次のページで紹介します。
 

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【漫画】「そういうことじゃない(笑)!」実は心地いい他人との同居とは
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