フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。
外食大手のワタミが、新型コロナのワクチン接種を終えた店員に「安全マーク」を検討していることがニュースになりました。
企業努力にも限界があり、厳しい状況が長く続いている飲食業界で、このまま何もできず(またはさせてもらえず)会社に万が一のことがあっては店員たちの生活をも守れないという現実を前に、お客様に少しでも安心してもらい、来店が増えるように、と考えることは自然なことと思います。
一方で、接種の有無が差別につながってはならない、人権侵害になってはならないと分かっているからこそ、「検討」という段階なのだと理解しています。
これも職業病でしょうか。
もしかしたら本質から逸れてしまうかもしれませんが、「安全」という言葉について考えてしまいました。
ブレークスルー感染の事例も出てきている中、ワクチン接種=「安全」と表現して良いものなのでしょうか。
厚生労働省特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」より抜粋してみると……
いずれのワクチンも、薬事承認前に、海外で発症予防効果を確認するための臨床試験が実施されており、ファイザー社のワクチンでは約95%、武田/モデルナ社のワクチンでは約94%の発症予防効果が確認されています。また、アストラゼネカ社のワクチンは、海外で実施された複数の臨床試験の併合解析の結果から、約70%等の発症予防効果が確認されています。
重症化予防効果については、薬事承認前に行われた臨床試験では症例数が十分ではなく解釈に注意が必要ですが、実施された臨床試験や、承認後に実際に接種された人の情報を集めた研究等から、これらのワクチンの重症化予防効果を示唆する結果が報告されており、効果が期待されています。
感染を予防する効果については、いずれのワクチンも承認前の臨床試験では確認されていませんが、現在、多くの国又は地域でこれらのワクチンの接種が進められることでデータが蓄積されつつあります。一部の国で実施された研究では、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを接種した人の方が、接種していない人よりも感染者(有症者・無症候性感染者のいずれも)の発生が少ないことを示唆する結果が報告されています。なお、これらのデータは臨床試験と異なり、同じ条件の対照群を置くことが困難なこと等から、結果に偏り(バイアス)が生じやすいことに注意して解釈し、今後の様々な研究結果を見ていく必要があります。また、ワクチンの発症予防効果は100%ではないことを踏まえると、接種後も引き続き、感染対策を継続することが重要です。
※厚生労働省特設サイト「新型コロナワクチンQ&A」の「Q.日本で接種が進められている新型コロナワクチンにはどのような効果(発症予防、持続期間)がありますか」より抜粋。太字は筆者。
噛み砕くと、
発症しにくくなることが「確認」され、
重症化を防ぐ効果が「期待」され、
感染を防ぐかどうかについては多くの国や地域で「データが蓄積されているところ」、
という点で、ワクチン接種すれば「安全」と表現されるのかもしれません。
しかし読み込んでみると、
発症が100%防げる訳ではないし、
重症化については「期待」の段階なのでより注意が必要で、
感染予防については「期待」よりも前の段階で、今後の結果を見ていく必要がある。
ということは、
ワクチン接種で感染を防げるとは言い難いので、もし感染していた場合に、症状が出ないことで感染には気づかず誰かにうつしてしまう、というリスクも考えておかなくてはいけないと思います。
引用した厚労省のページでも、「ワクチンの発症予防効果は100%ではないことを踏まえると、接種後も引き続き、感染対策を継続することが重要」と注意を呼びかけています。
国を挙げてワクチン接種を推進している中、その声や力が大きければ大きいほど、受け取った側の意識は、ワクチン打ったら大丈夫、という方向に傾きやすい気がしています。
「安全」という言葉が「油断」につながってしまわないように、
伝える側としては、広く、正しく認識してもらうことの難しさを感じると同時に、
受け取る側としても、一人一人の考え方や、考える力が問われ続けていることを感じています。
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