フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。

 

ちょうど1週間前に行われたパラリンピック開会式。
パフォーマー1人1人の表情が、晴れやかに爽やかに輝いていて、心が震えました。

 

4度のマラソン実況、車いすトライアスロン、久石譲さんと50人のオーケストラ、などに関わらせて頂いた24時間テレビでも、一番胸に響いたのは、「今、ここにいる喜び」「今、生きている喜び」とでも言うような、全身全霊の、魂のようなものに触れた時でした。

東京パラリンピック金メダル第1号は、競泳の100m自由形の鈴木孝幸選手。
富田宇宙選手も400m自由形で銀メダルを獲得しましたね。

写真:SportsPressJP/アフロ

今回は、「自由」について考えてみました。

まず、オリンピックの競泳で、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライはそのまま種目名になっているのに、クロールだけは、なぜ「自由形」と呼ばれるの? と疑問に思われた方がいらっしゃるかもしれません。
文字通り、自由にどんな泳ぎ方をしてもいいのが、自由形という種目なのですが、クロールが一番速いから、オリンピックでは自由形=クロールとなっています。

それがパラリンピックの自由形では、クラス分けによっては、手でクロールのように泳ぐ選手と、足でバタフライのように泳ぐ選手が、競うこともあります。それこそ自由に、自分が一番速く泳げる方法で泳ぎます。
スタートも、飛び込む選手だけでなく、水中からスタートする選手もいます。
開会式でも紹介されていましたが、これぞまさに自由形。

思えば、プロ野球選手も、イチロー選手の振り子打法、野茂投手のトルネード、岡島投手のノールック……。選手個人の特徴や感性を生かした結果、「独特」と言われるようなフォームがありました。
前例や常識やセオリーに囚われず、今の自分に備わっている特徴を、心も体も最大限に生かす、という素晴らしさに、パラリンピック選手とプロ野球選手との違いはないと思います。
そして、大谷翔平選手の二刀流での活躍にも、通じるものを感じます。

「自由」という言葉は、「自らに由る」、「自らに基づく」という意味。
片腕がないから不自由だ、と思うのか、
この片腕で自由にやろう、と思うのか。
「自由」でいるためには、勇気も、覚悟も必要で、もしかしたらより厳しい道ではあるけれど、だからこそ、魂が磨かれ、輝くのかもしれないですね。

パラリンピック選手の躍動感と、魂の輝きを目の当たりにしながら、どこかで何かを言い訳にして、どこかで何かを諦めてしまっていないかしら……と胸に手を当てています。
 

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