フランス在住の作家・パリュスあや子さんが描く、愛の国フランスに住む日本人の恋愛模様。駐在妻・葉子の場合はーー。

「私、見たよ」――深夜1時のライトアップのもとで【最終話】_img0
 
これまでのお話
武臣にこの関係をどうしたいかと聞いてみた葉子。答えははぐらかされたまま……。

「三年目のシャンパンフラッシュ」連載一覧はこちら>>

 


三年目のシャンパンフラッシュ(9・最終話)


18時半からのディナーだったのに、もう22時近い。

私は焦っていた。

レストランを出て武臣の引き締まった腕にしがみつくと、武臣は私の腰に腕を回して抱き寄せた。

「葉子と一緒になったらどんな生活だろうって夢見ることがあるよ……葉子は?」
「うん、私も」

嘘だった。

一度も武臣との生活なんて考えたことはない。そんなことあり得ないって知ってるから。

武臣ほど完璧主義の人と暮らすなんて息が詰まるに決まっている。電話で愚痴りあって傷をなめあって、たまに会うだけだから楽しいのだ。イベントが毎日続いたら、疲れ切るのは目に見えている。

――武臣は「薬」。過剰摂取はまずい……