ダイアナ元皇太子妃について描いた映画「SPENCER」の予告編や広告が話題になっています。私はコピーの「Every fairy tale ends.(すべてのおとぎ話は、いつか終わる)」に深く頷きました。

とりわけ子どもをジェンダーニュートラルに育てたいタイプの親にとっては、自分の娘がいつのまにかピンク大好き、プリンセスになりたい、王子様と結婚するのが人生のゴールと思っている……?! となるのは心配の種だったりするのですが、そんなお母さん、お父さんたちに、朗報です。

うちの5歳の娘は、最近「プリンセスになりたい」をやめました。

娘が読みたいもの、見たがるものはあまり制約しない代わりに、我が家では、極力、色々なプリンセスを見せるようにしてきました。

幸い、世の中のプリンセス像も多様化しています。ディズニープリンセスの最新作「ラーヤと龍の王国」に出てくる2人の姫は、一度もドレスを着ない、国と平和のために闘う武闘派プリンセスでした。

また、おすすめしたいのは『のはらひめ』という絵本。プリンセスになるのには大変な努力が必要で、かわいくなる、素敵なドレスを選ぶだけではなく、礼儀作法も勉強も、時には闘うことも必要と教えてくれる本で、これを読んで娘は、プリンセスになるのを「大変そう」と思い始めたようです。

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「のはらひめ おひめさま城のひみつ」(中川千尋・著、徳間書店・刊)

こうやって様々なプリンセスの、なる前・なった後の姿を見せれば、安易な「王子様と結ばれて幸せ」のゴールを目指しはしないはず!

でも、ふと気づいたのです。多様なプリンセスというのなら、歴史上に、そして現実にも、山ほどいるということに。ちょうど、(以前のミモレ記事でも書いたように)家で読んでいた漫画『世界の歴史』にあまり女性がでてこなかったこともあり、娘の好きそうな絵柄の伝記漫画を買いました。

 

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左:「まんが人物伝 マリ・アントワネット」(長谷川まゆ帆・監修、駒形・イラスト)、右:「同 クレオパトラ」(阪本浩 ・監修、雪広うたこ・イラスト)いずれも角川書店・刊

ずばり、チョイスはクレオパトラとマリ・アントワネット! これに、はまりにはまりました。伝記ではない一般的な歴史の本や漫画では、クレオパトラはその美貌や死に様、マリ・アントワネットは贅沢ぶりと悲惨な最期がちょっと出てくるのみ、というケースが多いと思うのですが、その生涯全体を述した伝記を読むと、私たちの間にはかなり偏ったイメージのみが広がっている(場合によっては、その時代に敵対する相手によって流されたイメージが刷り込まれ、現代にまで続いているケースもある)ことに気付かされます。

これらの伝記漫画は専門家監修のもとで作られており、私も知らなかったようなエピソードや解説が盛りだくさん。クレオパトラが多数の言語を操り、きょうだい間の熾烈な競争の中で、時に大胆な戦略を駆使しながら、エジプトのことを考え、ローマ帝国とも組み、カエサルやアントニウスと地位を築いていく様子は大変興味深いです。

マリ・アントワネットも、その帰結を見れば「なりたいお姫様」にはなりえませんが、14歳で政略結婚の道具になり、単身でフランスに渡った時の孤独はいかばかりだったかと同情を禁じえません。実在の人物の人生は、必ずしもハッピーエンドになるわけでもなければ、決してシンプルな評価に落とし込めるものでもない。

もちろんこのような伝記だって、ある歴史の見方を切り取っただけという側面もあるとは思います。でも、伝記漫画は子どもに、プリンセスは憧れるけど大変そうで、なりたいとは思えないけど尊敬する、ハッピーエンドじゃないけど面白い……といった複雑な歴史や現実を感じてもらう絶好の機会になったかなと思います。

前回記事「家族や結婚はもっと「柔軟に形を変えるもの」であっていい」はこちら>>