フードジャーナリストの小松宏子さんが、最新の食のトレンドを紹介します。
クラフツマンシップによる少量手作りで、個性豊かなクラフトビール。その人気はすっかり定着していますが、あまりにもいろいろなタイプがあり、何を選んだらいいのかしら?と、迷ってしまうことが多いのも事実。実際、醸造方法により、苦みが強かったり、酸味が際立っていたり、味わいの傾向が大きく異なってきます。
そこで、今回は、クラフトビール専門店「びあマ神田」の店長松村千春さんに、タイプ別に、女性好みの5本を選んでもらいました。この5タイプを知ることで、クラフトビールの全体像がわかりやすくなるだけでなく、近年の流行りもおさえられるので、ぜひ、試して覚えてみてください。
タイプ①
蒸留過程でパッションフルーツ投入!
果実のフルーティさが特徴
モダンタイムス
フルーツランズ
1本 473ml ¥947
苦みはほとんど感じず、乳酸菌由来の爽やかな酸味と果実のフルーティさが特徴のいわゆるサワーエールに分類される1本。このタイプは、16世紀にドイツで生まれた古いスタイルの醸造法が、昨今アメリカで見直され、2013年あたりから、いくつかのブルワリーが醸造してブームになったものだそう。モダンタイムス フルーツランズもその1本。グラスに注ぐと乳白色がかったオレンジ色も個性的。蒸溜過程でパッションフルーツとグアバを大量に投入しているので、ひと口飲むと、心地よい酸味とともに、トロピカルフルーツ感がはじけ、同時に塩味も感じるので、フィニッシュはドライで心地いい。チーズと合わせるなど、ワイン感覚で楽しめるのも魅力。
タイプ②
ホップ多めの
苦味と香りを楽しむIPA
エクリプティック
フェザーヘイジーIPA
1本355ml ¥787
IPAは、インディアペールエールの略。インディアというのは、「インドの」という意味で、かつて、イギリスから植民地インドにビールを送るのは、喜望峰周りの長旅。その間の劣化を避けるために、防腐効果のあるホップをより多く使ったのが始まりで、結果、苦みと香りが増した新しいタイプのビールが出来上がりました。このように、IPAというと苦いというイメージがありますが、今回の“ヘイジーIPA”は、hazy=濁ったという意味で、苦みが抑え目なのが特徴。濁り感の所以は、オーツ麦や小麦などを使用することによるのだそう。また、ホップの使い方に特徴があり、最後の熟成の段階で香りづけに大量に使うため、フルーティな芳香がつき、苦みを抑えた仕上がりと相まって、昨今大ブームに。エクリプティックはクラフトビールの本場、オレゴン州ポートランド産。キレのよいシャープな苦みとともに、柑橘系やパッションフルーツ系の香りとジューシーな味わいが一つになった、実にバランスのいい1本。
タイプ③
南ドイツ発祥の小麦麦芽由来のビール
無ろ過・非熱処理で豊かな味わい!
箕面ビール
ヴァイツェン
1本 330ml ¥539
ヴァイツェンとは、小麦麦芽を50%以上使った、南ドイツの伝統的な製法のビール。ホップの苦みが少なく、フルーティに仕上がるのが特徴。ヴァイツェン酵母によるバナナのような甘い香りとクローブのスパイシーな香りもありますが、箕面ビールのそれは、食事との相性も考えて比較的、控えめ。むしろキレのよさが際立ち、女性にも飲みやすい1本です。箕面ビールは、日本のクラフトビールの中でも草分け的存在で、すべてのビールが非熱処理で、酵母をろ過せずにそのまま瓶詰めするため、より豊かな味わい。イギリスで行われるワールド・ビア・アワードで8度金賞を受賞したほか、国内のビール大会でも数々の賞も受賞。
タイプ④
モルトのコク、ポップの香りが
濃厚に進化したアンバーエール!
ピッツァポート
クロニック アンバーエール
1本 473㎖ ¥722
アンバーエールとはアメリカの西海岸で生まれたビール。イギリス発祥で、モルトのコクやホップの香りがふくよかに感じられるペールエールを、より濃厚に進化させたものがアンバーエールです。しかし、ピッツァポートのアンバーエールはアルコール度数4.9%と低めで、とてもスムースな飲み口で、ライトボディなのですいすいイケてしまいます。けれど、余韻にふくよかなモルトの香りや甘みがふんわりと漂い、Chlonic=中毒性という意味もあるように、やみつきになるようなおいしさがあるのです。ピザポートという名前は、実は、サンディエゴのピザ屋さんを買い取り、店内の一部をブリュワリーにしたのが始まりだから。まさにピザにぴったりな1本です。
タイプ⑤
焦がした大麦の香ばしさ!
黒ビール好きに捧ぐ洗練の味わい
ひでじビール
栗黒
1本 330ml ¥1133
黒色になるまで焦がした大麦を使って醸造、「スタウト」と呼ばれる濃厚な黒ビール。宮崎県ひでじビールの「栗黒」は、県内産の栗を副材料に使い、ローストバーレイ(焦がした大麦)とペースト状にした栗を使って醸造し、コーヒーやキャラメルのような香ばしくて甘やかなフレーバーと、栗独特のコクと重量感を感じさせる飲み口を実現。アルコール度数9%と、ビールとしては高め。また、数か月~数年に及ぶ瓶内熟成が可能。熟成香が増し、複雑でまろやかな味わいへと変化していきます。イギリスで行われた、ワールド・ビア・アワード2017で、スタイル別世界一、カテゴリー別世界一のW受賞。
構成/藤本容子
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