親密であればあるほど、相手への誤解が多い

 

これは、ウィリアムズ大学とシカゴ大学の研究者らによる実験で実証されています。
実験室に、椅子を丸く外向きに並べ、2組の夫婦が背中あわせになるよう座らせます。2組は初対面で互いを知りません。

 

そして、日常的な会話で使われるものの、複数の意味にとれるフレーズを、ひとりずつ言うよう指示されます。言った人の配偶者は、自分のパートナーがどういう意味で言ったと思うかを答えます。発言した夫婦を知らないもう1組の夫婦も、フレーズの意図が何であるかを当てます。たとえばこんな感じです。

「今日はいつもと感じが違うね」
というフレーズは、「顔色が悪いよ」という意味にもなれば、
「ほらね、君の外見をちゃんと見ているよ」
「新しい髪型、いいね!」
「うーん、何かが違うとは思うけど、どこが違うのかわからない」
という意味にもなります。

参加者は、自分が言わんとしている意味について、知らない人より自分の配偶者の方が理解してくれるはずだと思っていましたが、両者に違いはまったくなく、配偶者の方が当てられなかったときさえありました。

似たような実験で、親友同士もまた、お互いの言葉を理解しあっていると過大評価していることがわかりました。

この実験では、被験者をまずは親友同士で、次に知らない人とペアになって、同じ作業をしてもらいました。

中がマス目に分かれた棚のような大きな箱が用意され、マスごとに、たとえば「花」の置物と「鼻」の模型のように同じ音を持つ名前のアイテムが何組か入っていました。

マスには、片方の人にしか見えないものと、ペアの相手にも見えるものがあります。被験者はここで、自分のペアの相手に、自分がとって欲しいものの名前を告げるよう指示されました。

すると、親友同士の場合は、「花」と言えば、相手は鼻ではなく花を見ていると思いこむ傾向が見られました。親密であるがゆえに、相手も自分と同じものが見えている、自分たちの考えは似ているという錯覚が生まれたのです。

知らない人の場合は、このような間違いを起こす傾向は低くなりました。知らない人から指示されたときの方が、お互いから見える正しいアイテムに手を伸ばしたのでした。