フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。
海外に長くいると、日本の良いところも、そうでないところもよく見える。と言われます。
海外在住の人の日本語は綺麗。という話も聞いたことがあります。
「国語」として習ったものをそのままに、言葉が変化しにくい環境だから、という気がしますが、もしかしたら、海外にいるからこそ、日本語の美しさをより感じやすく、大切にしたいという気持ちが強まる、という側面もあるかもしれませんね。
アメリカで暮らしている友人(日本人)から、「どういうこと?」と聞かれた言葉があります。
ニュースで耳にして驚いたそうですが、アナウンサーが読み上げていたため、なおのこと引っかかったそうです。
「緊急事態宣言を延長する意向を表明する方向で、調整を図る」
結局どういうこと?
アナウンサーがこんな言葉使うの?
友人も、もちろん分かって聞いています。
海外生活が長いからなのか、そこがアメリカだからなのか、単に日本語に敏感なのか……いずれにしても、これがニュースとして流れること自体が信じられなかったそうです。
おそらく皆さまも想像されている通り、政治家や官僚などの発言や発表を「かぎ括弧」の状態で原稿にしたものだと思う、と答えました。
やたらと一文が長かったり、
必要以上に修飾語が散りばめられていたり、
言葉遣いや説明がまどろこしくて分かりにくかったり……
わざと読み手の集中力を切らそうとしているのか!?
本題をうやむやにして煙に巻きたいのか!?
とツッコミたくなるようなややこしい文章って、世の中意外と多いですよね。
この場合、中身は
「緊急事態宣言を延長するよう、調整を図る」
それ以上でも以下でもないのですが。
反発を和らげるため少しオブラートに包むとしても、
はたまた万が一、観測気球だったとしても、
「緊急事態宣言を延長する方向で、調整を図る」
で十分です。
そういえば、オブラートって、うっかり2枚重なったままだと飲みにくかったですよね……。
「国語」としては、無駄が多く、焦点がぼやけていて、赤点かもしれませんが、コロナ対策は、あちらを立てればこちらが立たず、立場によって望むものが時に正反対なことも多い中での、各所、各位の苦悩が滲み出ているような気もしました。
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