真のフェミニスト、アンチレイシストとは

 

性差別主義のポリシーは「男女間の不公平」を生みだし、レイシズムポリシーは「人種的不公平」を生みだす。あるポリシーが“人種およびジェンダー間の不公平”を生みだすとき、それはジェンダー化されたレイシズム、すなわち「ジェンダーレイシズム」になる。

※本書中の「ポリシー」とは、人々を管理・統治するための、明文化された、または明文化されていない、政策、法律、規則、手順、プロセス、規制、ガイドラインなどのこと。

では、アンチレイシズムでは、この問題をどう考えるだろうか。

アンチレイシストであろうとする者は、“人種のヒエラルキー”だけでなく“人種ジェンダーのヒエラルキー”も拒否する。フェミニストであろうとする者は、“性別のヒエラルキー”だけでなく“人種ジェンダーのヒエラルキー”を拒否する。

つまり、真のアンチレイシストはフェミニストであり、真のフェミニストはアンチレイシストなのだ。アンチレイシスト(そしてフェミニスト)であろうとする者は、異なる人種ジェンダーを平等に扱い、「ジェンダーレイシズムポリシー」にひそむ“人種ジェンダー間の不公平”を根絶する。

 


著者は「レイシズムはぼくたちの社会の始まりから存在している。あまりにもありふれているので、当たり前だと感じることすらある」と述べ、黒人の詩人で活動家のオードリー・ロードの1980年の発言を下のように引用。それでもなお、著者は「アンチレイシストであろうとすること」が重要だと考えます。

「わたしたちはみな、人間同士の差異に恐怖と嫌悪で反応し、次の三つの方法のいずれかで対処するようにプログラムされてきた。無視する。無視できない場合、支配的だと思えば真似する。従属的だと思えば破壊する。わたしたちの社会には、人間同士の差異を認め、それを超えて対等な関係をつくるための行動パターンがない」

アンチレイシストであろうとすることは、このような歴史を目の前にして、それでも根本的な変化を実現するための選択をすることだ。そのために、ぼくたちは根本的なところから意識を変えなければならない。


不公平に直面した時、常に勇敢な行動を選択することは簡単なことではありません。しかし、自分自身を良い方向に導くためにも、“差別に加担していないか”“差別を黙認していないか”自問自答する力を放棄しないことが大切なのかもしれません。本書は社会のレイシズムとその背景を知り、世界を捉える視点を広げることができる一冊です。
 

著者プロフィール
イブラム・X・ケンディ(Ibram X. Kendi)さん

歴史学者、作家。ボストン大学〈反人種主義研究・政策センター〉の創設者であり所長をつとめる。本書は2019年にアメリカで刊行され、大ベストセラーとなった。アメリカの人種差別の歴史を描いた『Stamped from the Begining』は2016年全米図書賞(ノンフィクション部門)を受賞。

訳者・児島修(こじま・おさむ)さん
英日翻訳者。立命館大学文学部卒。主な訳書に、パーキンス『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社)、リトル『ハーバードの心理学講義』(大和書房)、フィネガン『バーバリアンデイズ』(エイアンドエフ)などノンフィクションを中心に多数。

『アンチレイシストであるためには』
著者:イブラム・X・ケンディ 訳:児島 修
辰巳出版 2420円(税込)

世界にはびこるレイシズム(人種主義)。その構造や本質を、著者の体験を交えながら解き明かすとともに、人種、民族、文化、階級、ジェンダー、セクシュアリティなどの違いを平等に扱う「アンチレイシスト」であるにはどうすればいいのかを、徹底的に考えます。「アンチレイシストであるための方法を学ぶ」ための一冊として、全米で130万部のベストセラーに。米Amazonには2万件以上の高評価レビューが寄せられています。


構成/金澤英恵