フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。
私は今の仕事をしていなければ、一生すっぴんで過ごしていたと思います。
それほどズボラな性格で、しかも、子どもの頃からメイクに苦手意識がありました。
お化粧すると皮膚呼吸が出来なくなる気がして、母の化粧品の匂いも強く感じられて、型にはめられるような息苦しさもあって。
七五三では、千歳飴に釣られて我慢したものの、記念写真はどれもブスッとしています(笑)。
その上、髪を切るのも母、イベント時のメイクも母。しかもその母には特別な知識や腕やセンスがあるわけではなく、ちょっと器用な人が、子どもの好みを無視して自分好みに仕上げる。という環境も、私をおめかしから遠ざけていた気がします。
アナウンサー面接の時ですら、ファンデーションはごく薄〜く塗り、口紅は色が落ちるほどティッシュオフ。眉は生やしっぱなしで、アイシャドウ、アイライン、マスカラ、チーク、など一切なし。
それでも本人は、ちゃんとメイクしているつもりだったので……。
カメラテストの前日、人事部の方が「メイクをしていない方もいるようですが、カメラ写りが全然違うので、できればしてきた方がいいですよ」とアドバイスしてくれた時も、「え〜? みんな綺麗だったはずだけどなぁ??」とキョロキョロ見回す。
隣りに座っていた、後に同期入社となる長谷川憲司くんが、「馬場ちゃんのことだからね」と苦笑いしながら教えてくれました。
局員はほとんど自前メイクなので、今は新人研修にメイクもあるそうです。羨ましい!
私の場合は、たまにプロにメイクしてもらえる時が、チャンスでした。
メイク中は、基本的なことだけでなく、ちょっとした技まで見て学べるし、教えてもらえる。メイクを落とす前にも、自前とはどう違うのか、特にアイラインの引き方などを入念にチェックする。ということを繰り返して、身につけていきました。
ズボラな性格までは変わらなかったので、仕事メイクでも10分ほどで終えていましたが。
一回りほど上の先輩方は、「有事はいつ起こるか分からないから」と、出番のない日でも、すぐにカメラの前に立てるように、いつもきちんとメイクをしてジャケットを羽織っていました。
ファッションについて教わったことなども、またどこかでお話しできればと思いますが、そんな先輩の背中や、人に見られる立場のお陰で、メイクやオシャレは、自分を飾るもののようでいて実は、相手への社会人としての礼儀でもある、ということが分かってきました。
もしアナウンサーの顔色が悪かったら、心配になって、情報が入って来ないかもしれないですよね。一方で、メイクが濃すぎても、情報の邪魔をしてしまいそうです。
それでもやはり、三つ子の魂なんとやらで……。
マスク生活が続くので、顔を見せることも少ないし、「肌を守るため」とか何とか言い訳して、隙あらばすっぴんになろうとしています。
今月から始まったラジオ番組「GIFT〜未来への贈り物〜」が決まった時も、「やった! ラジオだからすっぴんで大丈夫ですね!」と喜んで、マネージャーさんに「いえ、公式Twitter用に写真撮影がありますよ」と突っ込まれました。
しかも、「そもそも、ゲストをすっぴんでお迎えするってどうなのよ」と気づいたのは、番組が始まってからのことでした。
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