皆さん、こんにちは。梅津奏です。

ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのもやもやエピソードをもとに、日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。

今日ご紹介するのは、来店客が先にレジで会計してから席につくタイプのカフェでよくみられるシーンです。

 


「先にお席はおとりでしょうか?」は大きなお世話?


エピソードをお寄せくださったのは、ワーキングマザーとして大忙しの毎日を送っているミユキさん(43歳・会社員)。

よく子連れで訪れる近所のカフェ。レジで「イートインで」と伝えると必ず、「お席はおとりでしょうか?」と聞かれます。

私としては、「多分座れるだろう。ダメだったら立って待とう」と考えているわけだけれど、注文した後に席が無くてクレームされることを恐れているのでしょうか。お互い大人なのにな、となんだかモヤモヤします。


「お席はおとりでしょうか?」「いえ、とっていません」「席がないかもしれませんが……」「えっと……、確認してきます」「ありがとうございます」

全国各地のカフェで交わされているであろう会話、脳内でするすると再現されました。大昔、チェーン系カフェでアルバイトをしていたので、お店側の心配もよくわかります。世の中には、びっくりするような理由でクレームをつけるお客さんというのが意外にいるんですよね。

しかし、なんなのでしょう。「お席はおとりでしょうか?」と聞かれるたびに感じる、うっすらと自尊心が削られるようなこの気持ち。

 


ある種のマニュアルは、私たちを大人扱いしていない


(ある程度例外はあるにせよ)日本の飲食店の多くは、店内は清潔で、店員さんは礼儀がしっかりしていて、提供される商品も高い水準をクリアしています。そしてこの傾向は、もしかするとチェーン系のお店であるほど強く出ているかもしれません。

それには、企業としての膨大な経験と危機管理のスペシャリストたちの英知が詰め込まれた、「接客マニュアル」の存在が大きく影響を及ぼしています。

ありとあらゆるトラブルを想定し、それを先回りして封じ込めるノウハウ。現場で事件を起こさないように、店員さんがパニックに陥らないように、

しかし、そんなマニュアルはともすれば、「店員にも客にも、分別も判断力もない」ことを前提にしているように感じることもあります。言葉を選ばずに言えば、「頭のワルイ店員さん」でも理解でき、「理解力のないお客さん」にも文句を言わせない鉄壁のマニュアル。

「お席はおとりですか?」と聞かれるたびに、「お店が混んできたら、席の利用は二時間以内でお願いします」と言われるたびに、心にモヤモヤがたちこめるのは、「この人は、私を大人扱いしていない」と感じるからかもしれません。


目指すべきは、「マニュアルなし」で生きられること


とはいえ、「マニュアルなんて撤廃しよう! みんな自己責任で自由にやろう!」とおおっぴらに言うのはなかなか難しいですね。色々なタイプの人と関わる上で、マニュアルがある方が楽で安全なのは間違いない。

それでもたまに、そんなマニュアル文化に染まりきっている自分に危機感を感じること、皆さんにはありませんか?

私の場合は、「基本放置」がプレイスタイルの上司の下についたときとか、海外の空港やホテルでそっけない接客をされたときなど。マニュアルというぬるま湯でダルダルビロビロにふやけてしまった自分の判断力が、泣けるほど情けなくなることがありますよ……。


成熟した大人としての自負があるのであれば、マニュアルに書かれているようなことは自然とその場の判断でできるはず。

学生時代、数学の得意な同級生が「公式を覚えなくても、順序だてて考えていけば答えは導ける」と言っていて「神の所業じゃないか」とビビったことがありますが、似たようなことでしょうか。初体験の事態に陥ったとしても、周囲の人に聞いてみるとか、失敗覚悟で色々試してみるとか、やりようはあるはず。ちょっと遠回りになったとしても、「これも経験よね、ふふふ!」と(おでこにバンソーコーはりつつ)言えるような大人が、実は素敵なんじゃないかしら。


今後レジで「お席は?」と聞かれたら、「ご親切にありがとう。でも私は大丈夫です」とにっこりお伝えするようにしよう。そして「あ、大丈夫なんだ」と店員さんに思ってもらうことが、「マニュアルなし」の世の中を目指す小さな一歩になればいいなと思います。

皆さんは、マニュアルにモヤモヤしたことありませんか?
 

皆さんのモヤモヤ話を教えてください!
職場や家庭で、イラっとしたけど言えなかった、違和感を感じたけど言葉にできなかった、モヤモヤしているのは私だけ? と思った経験がありましたら教えてください。エピソードを掲載させて頂く際はミモレの会員ニックネームではなく、仮名でご紹介します。皆さまからのエピソード投稿をお待ちしております。
 
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構成・文/梅津 奏

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