皆さん、こんにちは。梅津奏です。

ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのもやもやエピソードをもとに、日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。

今日ご紹介するのは、男性の多い職場で起こりがちな「言葉えらび」に関するモヤモヤエピソードです。

 


「女性らしい職場をつくっていこう」って、なに?


エピソードをお寄せくださったのは、ザ・男社会の業界で数少ない女性の専門職として働くアズサさん(46歳・会社員)。

中途入社で今の会社に入って、働きながら勉強して資格をとりました。合格率は10%台といわれる、かなり難関の資格です。少しでも知識をつけて、いい仕事をしたい、職場に貢献したいという思いからだったのですが……。

ある日男性の上司から、「女性らしい事務所をつくっていこう」と言われました。せっかく女性の専門職がいるのだから、「女性らしい」華やかな雰囲気の職場づくりを考えてほしいということらしいです。私に求められているのは、「女性らしさ」なのか? 女性らしいってなに? と、なんだかむなしくなってしまいました。


ああ、ありそう……。そして「自分もうっかり言ってしまいそう」、とヒヤリとしました。「女らしい服装」とか「男らしい態度」とか性別にまつわる表現は、言っている本人は肯定的に使っていることも多いからよけい複雑な問題になりがちな気がします。

 


「言葉狩り」にクレームする前に、一度考えてみたいこと


「思ったことをそのまま言えないなんて、不自由な世の中だな~」
「そんな風に責められたら、怖くてもう何も言えなくなっちゃうよ」
「こちらとしては褒めているつもりだったのに、怒られるなんて」

他意なくつかった言葉に対して、「そういう表現はジェンダーバイアスうんぬん……」と指摘されてしまったとき、心の中にこんな思いが浮かぶことはないでしょうか。「言葉えらびに関する指摘」を、「言葉狩り」と表現する人もいるかもしれません。


「考え抜いた上で、あえてその言葉を使ったのだ」と胸をはれるのであれば、堂々と議論すればいい。でも、「言葉狩りだ!」と思う心の奥底に「(使い慣れた言葉をつかってはいけないなんて)めんどくさい」という気持ちがあったのであれば、やはりその言葉づかいは考え直さなければならないものだと思うのです。

つまり、たかが数十年間の人生で身につけたボキャブラリーや価値観でずっと生きていけるほど、人生100年時代は甘くないということ。

「とはいっても、ほかに適切な言葉が見つからない」とあきらめる前に、できることはたくさんあります。本を読んだり、映画を観たり、歴史を学んだり、自分とは違う世代の人と話してみたり。何歳になっても、学び続け、新しい価値観にオープンマインドで向き合うことが、よりよく人とつながり続けるコツなのではないでしょうか。


新しい語彙を学ぶことは、「傷ついてきた自分」を救うことにもつながる


アズサさんの上司が本当に言いたかったのは「働く人の気持ちが明るくなるような、華やかな雰囲気の職場にしたい」ということだったんじゃないかと思います。ちょっと、言葉の因数分解が足りなかったですね……。

伝えたいことの本質をよく考え、相手に伝わりやすい言葉を選ぶ。他人を傷つける可能性のある言葉は勇気をもって捨てて、新しい語彙を学ぶ。そんな姿勢が、今の私たちには求められているのかな。


そして、そうやって「自分の辞書」をどんどん新しく、分厚くしていくことは、「既成概念にとらわれていた自分」を解放することにもつながるのではないでしょうか。

女性に「華やかな女性らしさ」を押しつけていた男性は、もしかすると「華やかな洋服やインテリアが好きな自分」を押し殺して生きてきたのかもしれない。

男性に「男らしいたくましさ」を押しつけてきた女性は、もしかすると「心身ともに強く、自立した人間になりたい」という憧れを封印して生きてきたのかもしれない。

ジェンダーから自由な表現を身につけることは、「本当に自分が求めていること」を再発見し、既存の価値観に(実は)傷ついていた自分自身を救済することにつながるのかもしれません。


皆さんは、「使わないように気を付けている言葉」や「新しく使うようになった言葉」はありますか?

皆さんのモヤモヤ話を教えてください!
職場や家庭で、イラっとしたけど言えなかった、違和感を感じたけど言葉にできなかった、モヤモヤしているのは私だけ? と思った経験がありましたら教えてください。エピソードを掲載させて頂く際はミモレの会員ニックネームではなく、仮名でご紹介します。皆さまからのエピソード投稿をお待ちしております。
 
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構成・文/梅津 奏

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