思い出せそうで、思い出せない。記憶が断片的すぎて、ぼんやりしたキーワードしか出てこない。もう一度読みたいのにどうしてもタイトルが出てこなくて、探すのを諦めてしまっている本、ありませんか? そんな時は、図書館の司書さんがきっと答えを見つけてくれます!

福井県立図書館・編著『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』は、本を探して図書館カウンターを訪れる利用者さんの“覚え違いタイトル”と、司書さんの“答え合わせ”をまとめた一冊。「『とんでもなくクリスタル』って本あります?」「ウサギのできそこないが2匹でてくる絵本」などなど“覚え違い”はまさに百人百様なのですが、司書さんは知識と技術を総動員して応戦。たったひとつの正解を探し当てるそのスゴ技に、「これでよくわかりましたね!」と利用者さんも感動するほどです。こんな聞き方じゃダメよね……と二の足を踏んでいる方も、本書を読めば「間違えててもいいんだ」「もっと気軽に相談していいんだ」と思えるはず! 今回はそんな本書の中身を少しだけ覗いてみましょう。

「『100万回死んだねこ』ありますか?」
図書館のカウンターには、毎日多くの利用者が本を探して質問に来られます。お探しの本を見つけるのは、司書の大事な業務のひとつです。
「『100万回生きたねこ』ですね」
「そうそう! これを探してました!」
そう言っていただけたら成功です。嬉しそうに目当ての本を借りて帰られる様子を見送って――忘れないようにメモを書き付けます。
「『100万回死んだねこ』→『100万回生きたねこ』、と」

 

うろ覚えのタイトル、本の内容の大まかなニュアンス、勘違いされていた作者名。福井県立図書館では、カウンターで出会ったそんな“覚え違い”をリストにし、ウェブで公開しています。それが「覚え違いタイトル集」です。

図書館は本の貸し借りをするだけの場所ではありません。大きな役割のひとつに「レファレンス」があります。簡単に言えば、利用者が探している“情報”にたどりつけるよう司書がお手伝いをすることを指します。

 

「こんな本を探してるんです」と尋ねられたとき、私たちはクイズさながら「ピンポン! それはこちらの本では!?」と瞬時に答えているわけではありません。
「著者の名前はわかりますか?」
「どこで本のことを知りましたか?」
「いつ頃出版されたものかわかりますか?」
そんなふうに利用者に質問を重ねたうえで正解を見つけています。この一連の流れがレファレンスサービスです。

司書にとって、こうした覚え違いに接するのはごく日常的なことです。そしてそのひとつひとつが、大事なレファレンスの事例になります。このため、福井県立図書館では以前から、職員の間で「どんな相談があって、どう対応したか」を共有すべく、Excelファイルで記録をつけていました。

真面目な目的で記録していたファイルですが、実は職員の間では、共感してなごめるものになっていました。あらためて読むと、このおもしろさはきっと司書でなくても共通のはず。それどころか、私たちだけで独占していたらもったいない!

そうして2007年に「覚え違いタイトル集」が生まれました。

次ページ▶︎ 「うろ覚え」でも答えを見つけ出す、図書館司書のスゴ技

あなたは正解にたどり着ける!? 「覚え違いタイトル」Q&A
▼右にスワイプしてください▼