いつの時代にも「神童」と呼ばれる人は存在しますが、現在の日本でまっさきに連想されるのは将棋棋士の藤井聡太さんではないでしょうか。2016年に14歳でプロデビューして以降、数々の最年少記録を塗り替え続けるその姿に多くの人が圧倒されていることと思います。その一方で、「子ども時代をどう過ごせば彼みたいになれたのだろう?」「我が子を彼のように育てるにはどうすればいいのだろう?」など、藤井聡太という雲の上の存在に少しでも近づいてみたい、という欲求もわいてきているのではないでしょうか?

そんな多くの人の思いに応えるのが、『考えて、考えて、考える』という対話集です。聞き手は元伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎さん。本書では、長年ビジネス界をリードしてきた丹羽さんならではの幅広い視点で、現在の藤井さんをかたちづくっているさまざまな要素を明らかにしています。

今回は、心の整え方、時間の使い方、逆境の越え方など生きるヒントがたっぷり詰まった本書のなかから、藤井さんの幼少期の性格や家族関係に言及した部分を抜粋してご紹介します。

 

悔しくて泣いたときの親の接し方


丹羽さんはトップに立つ人間に必要な条件として「負けず嫌い、反骨心」、「忘れる力」、「孤独の力」の3つを挙げました。そのうえで丹羽さんは、子どもの頃、負けて激しく泣いていたという藤井さんのなかに「負けず嫌い、反骨心」の資質を見出します。さらに、負けず嫌いだった藤井さんに対するご両親の接し方にも踏み込んでいくのでした。

 

丹羽 負けず嫌いで何度も何度も泣いた藤井さんが、今これほど活躍されているのは、成長と共に心の強さを身に付けることができたからだと思います。泣いているときに、ご両親はどうしていましたか?

藤井 負けて悔し泣きをしていたら、母はただ黙って、僕を連れ帰っていました。

丹羽 何十回と号泣されても、大人が落ち着いて見守っていれば、そのうち子どもは自分で自分の感情に折り合いをつけ、解決するようになります。そういう積み重ねが、心の強さを育むためにはきっと大事なんですね。「この子、お菓子をあげたら泣きやむでしょ」と親が泣きやませようとしたり、「将棋を頑張ったから、特別にこれをあげる」と特別扱いをしたりするのではなく、「可愛い子には旅をさせよ」という態度のほうが、長い目で見れば子どものためにはいいんです。お母さんから「そんなに泣くんだったら、もう将棋なんてやめなさい」などと言われたことはありますか?

藤井 一回だけあったかもしれません。ただ泣いたことは、その何十倍もあったはずです。基本的に、僕が負けて泣いていてもあまり怒ることなく、温かく見守ってくれていました。