他人の気配を感じたいけど、自由は奪われたくない


しかし、「契約結婚」となると話は別。そこに愛はないから、お互いのプライベートには踏み込まない。自分のことは自分でやる……と自立した関係を築くことができます。『ハンオシ』でも、好きな人を思い続けるために既婚者の肩書きが欲しい柊(坂口健太郎)と、祖母の店を維持するために500万円が欲しい明葉が、偽装結婚をするのですが、案外楽しそう? と観ていて思いました。もちろん、柊が出してきた「共同生活の掟」は面倒くさ……と感じたけれど、お互いの利害関係が一致しているのなら、これはこれでいいのでは? と。

1人でも楽しいけど、独りは寂しい……そんな思いから、ルームシェアを試みる人もいますよね。私の友人にも、「寂しいから」とシェアハウスに入居した人がいます。他人の気配を感じたいけど、自由を奪われたくないという人には、もってこいなのかもしれません。夫婦や、恋人となると、そこに愛があるからこそ、相手に求めてしまう。「もっと手伝ってくれたらいいのに」「このくらい、やってくれたってよくない?」ーー。『ハンオシ』第1話でも、柊が「多少という気遣いが、相手への干渉につながる可能性がある」と言っていました。

 

ただ、私だったら、偽装の結婚のために「書類の上のバツの一つや二つ!」とは思えないし、「500万円で私の人生貸します!」と言えるかどうか……。坂口健太郎だからこそ許されましたが、初対面でいきなりプロポーズなんて確実に通報されます。それに、「必要な時に、パートナーとして横に立っていてくれればいい」という台詞は、何かの詐欺にしか思えない……。既婚者の肩書きを手に入れるために、500万円ポンと差し出すなんて。

『ハンオシ』と同じく、契約結婚を題材にした『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)は、家事に対価を支払うことで、主婦(夫)の大変さや偉大さを痛感させることに成功しました。だからこそ、「あんな結婚もアリだな」と思う人が増えて、ヒットに繋がった。最初はただの雇用主と従業員だった平匡(星野源)と、みくり(新垣結衣)が、じわじわと距離を縮めていく姿も、愛らしくて応援したくなりました。

『ハンオシ』も、堅物サラリーマンな柊が、実は早起きが苦手だったりと、キュンポイントはたくさんありますが、作品としてはどのような「結婚観」を提示していくのかが見どころです。現状のメリットといえば、
①柊が既婚者の肩書を手に入れられる
②明葉のウエディング姿を見るまでは死ねない……と心配していた祖母を安心させることができる
③500万円で明葉の祖母の店を守ることができた
くらいでしょうか。今はまだ、デメリットの方が多い気がする偽装結婚……。ただ、2人の結婚生活はまだ始まったばかり。今後、どのような関係性を築いていくのかが楽しみです!


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