同じ臓器で代謝される薬を飲む際は要注意


例えば、Aという薬とBという薬があったとして、これらの薬の飲み合わせが悪いということが分かっているとしましょう。その際、体の中で何が起こっているかというと、例えばこんなことが起きていたりするのです。

 

AとBは両方肝臓で代謝される薬ですが、同時に飲むとAの代謝がBの代謝を阻みます。すると、Bの代謝が思うように進まず、Bが体の中に予想より多く残されてしまうことになります。その結果、効果が強く出すぎてしまったり、副作用のリスクが高くなってしまったりすることになります。

あるいはその逆で、Cという薬を飲むと、Dという薬の代謝が促進し、Dが効果を発揮する前に代謝されてしまうということもあります。

このように、同じ臓器で薬が代謝される場合、代謝の過程で影響を及ぼしあうことがあるため、注意が必要になります。

 


グレープフルーツと相性が悪い薬も


これは、薬だけではなく食品でも起こることが知られています。その代表例がグレープフルーツです。

 

グレープフルーツの成分の一部が代謝される際に、特定の薬の代謝を遅らせることが知られています(参考文献1)。このため、グレープフルーツをとることで、薬が予想より効きすぎてしまうということが起こり得るのです。

この「特定の薬」の代表例が、血圧を下げる薬であるニフェジピンやアムロジピンなどです。私自身もこの「グレープフルーツ問題」に医師として一度だけ遭遇したことがあります。

いつも収縮期血圧が130 mmHgぐらいの方が、突如として血圧がぐんと下がることが増え、「高血圧が治ったのではないか」「薬がいらなくなったのではないか」と相談されたことがありました。

薬を間違って多く飲んでいないか、新しいサプリメントはないか、など確認をする中で、「最近グレープフルーツを食べ始めていないか」と聞いたところ、グレープフルーツが体に良いと聞き、グレープフルーツジュースを飲み始めたとの話で、ビンゴだったのです。

処方を初めて受ける際にはグレープフルーツの話を聞いていても、数年が経過すると忘れてしまったりもするものです。ここではジュースが落とし穴になり、血圧の薬が効きすぎてしまっていたのです。
 


前回記事「「薬が健康を害する」のはなぜか?処方薬が原因で入院してしまうことも...」はこちら>>


参考文献
1    Daković-Svajcer K, Samojlik I, Rasković A, Popović M, Jakovljević V. The activity of liver oxidative enzymes after single and multiple grapefruit juice ingestion. Exp Toxicol Pathol 1999; 51: 304–8.

構成/松崎育子(編集部)
写真/shutterstock

 
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