ある薬の働きを、他の薬が妨げることがある


「薬の飲み合わせ」は、臓器での代謝のレベルでは問題がなくても、薬どうしが影響を及ぼしあうという例もあります。

例えば、心臓のポンプ機能が悪い場合などに、「利尿剤」と呼ばれる、体にたまってしまった余分な塩分や水分をおしっこで出させるという働きを持つ薬を使うことがあります。この薬に対して、イブプロフェンなどの鎮痛薬がその働きを邪魔することが知られています。

心臓のポンプが十分に機能しなくなる「心不全」という病気に対して、この利尿剤で治療中の患者さんというのは数多くいます。その方が、膝が痛くなって整形外科を受診し、痛みにイブプロフェンを処方されたとします。もちろん整形外科の医師は膝の痛みを緩和するためにこの薬を使ったわけですが、それがあだとなり、たちまち利尿剤の効果が悪くなります。

すると、利尿剤が効かなくなった体内では、再び肺などの臓器に水分が過剰にたまりはじめてしまい、心不全の悪化により入院してしまったなんていうことが起こりえるのです。

 

このケースでは、膝の痛みだけなら入院する必要はなかったにもかかわらず、患者を助けるために処方された薬で入院になってしまっています。当然、この心不全悪化による入院は、薬の確認が正しく行われていれば、防ぐことのできた入院です。

 

このように、新しい薬が始まる時には、自分が飲んでいる薬との相性に問題がないかを主治医や薬局の薬剤師としっかり確認することが大切です。もちろん、医療機関でもそのような確認は行われているものの、特に複数の医療機関を受診している際には注意が必要です。

 
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