皆さん、こんにちは。梅津奏です。

ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのもやもやエピソードをもとに、日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。

今日ご紹介するのは、リモートコミュニケーションが急速に進んだ今、いつまで続けていくべきかモヤモヤ悩む「挨拶」問題です。

 


「ご挨拶だけでも……」って、今挨拶したじゃないですか!?


エピソードを紹介してくれたのは、最近職場で部署異動することになったマミさん(会社員、35歳)。

異動先の取引先の営業担当者に着任のご挨拶メールを出したところ、「ご挨拶だけでもさせてください。お手すきの際に15分だけでも」と連絡がありました。

熱心なお誘いだったのですが、今のところその取引先にお願いしたいことはないし、相談したいこともない。何より忙しい。会うメリットが何も思いつかない。挨拶だけなら今メールで終わったしなあと思い、「あいにく立て込んでいるのでまたの機会にお願いします」とお断りしました。


異動にともなう担当替えとか、年度の区切りとか、色々なタイミングで恒例行事のようになっている「ご挨拶」。仕事に限らず、保険や銀行の営業さんからも同じような連絡がきたりしますし、マンション組合とか学校のPTA活動なんかでも同じようなことが起こりそうですね。

皆さん、「ご挨拶だけでも……」と連絡がきたら、どう対応されていますか?
 

 


「雑談から生まれるものもある」は、営業マン側の理屈

 

私も営業の仕事をしていたことがあるので、「ご挨拶」「ご機嫌うかがい」「表敬」なんていう言葉にはとってもなじみがあります。会社によっては、「毎日●件面談する」なんていうノルマがあるという話も聞いたことがありますね。

強制的にでもお客さまにコンタクトをとらせるというのは、営業側からすると一定の効果がある話。足しげく通うことで、お客さまとの心理的距離が縮まったり、雑談から営業のチャンスを拾えたりするのは事実です。すぐに商談につながらなくても、お客さまの近況やプライベートの話を伺うだけで価値がある。


……ということは、つまりどういうことでしょうか?

そう。「ご挨拶」によるメリットが常に保証されているのは、あくまで「営業する側」なんです。

「雑談から生まれるものがある」という理屈も、ビジネスの場ではまず、「相手と何かを生み出したい」という暗黙の合意が「両者に」あってこそ通じるものではないでしょうか。
 

「自分が何者か」を早めにはっきりさせなければならなくなった


ビジネスとして私にどんなメリットがあるのかを説明してくれるのではなく、「挨拶だけ」「15分だけ」という使い古された薄っぺらい言葉で、良心にすがろうとしている印象を受けてしまって、嫌な気分になりました。

マミさんの言う通り、「営業される側」からすれば、「貴重な時間をさいて、あなたに会わなければならない理由はなに?」と思ってしまうのも仕方ないことかもしれません。

もちろん、「特に用事がなかったとしても、この人に会うことは意味がある」という信頼関係が出来上がっているなら話は別。新製品情報やマーケットの動向を教えてくれるみたいな実利的なメリットだけじゃなく、神田伯山並みに話が面白いとか、わさお並みの癒し効果があるとか……、「わざわざ会う意味」は人それぞれ。


業務効率化が進み、多くの場面でクイックなオンライン手続が可能になっている現代。私たちは「個人の優先順位」を「社会や組織の優先順位」より優先できるようになってきました。多くの人が、仕事や生活の雑務はなるべく効率化して、「自分がやりたいこと」に時間を振り向けようとしています。

これは個人としてとても歓迎したい変化ですが、営業マンからすると「お客さまの時間をいただくハードル」が急速に上がってしまっている気がします。

「メールや電話で済むならそれでOK」
「人と会うわずらわしさよりも、AIによるサービス提供を選ぶ」

そんなマインドセットになりつつあるお客さまに「15分でいいのでご挨拶を」と詰め寄るのは、もはや時間泥棒のような行為なのかもしれません。


今までであれば、まずはご挨拶、そこから徐々に関係を深めて商談に……とステップを踏んでいきました。今はもっと早い段階で、「自分が何者で、どんな能力とメリットがあるのか」をオープンにしなければアポイントもとれない。会社員であっても、社名だけで自分の価値を説明できる時代は終わりつつあるのかもしれません。

こういう変化を、「世知辛い世の中になった」ととらえるのか、「個人の創意工夫が求められる面白い時代になった」ととらえるのか。皆さんはどう思いますか?

【次々回エピソードの予告】
次々回は、お友達や親族との精算問題にまつわるモヤモヤについて取り上げます。

「お友達家族とたまにご飯を食べに行きます。我が家は小6息子のいる3人家族。相手方は小2男、小3男、小6男、高2女の6人家族です。会計時はたいてい我が家側が伝票を渡されるのでだいたい半額ずつに分けていましたが、家族構成を考えるとこちらがいつも多めに出していることにモヤモヤしていました。先日、試しに相手方に伝票を渡してみましたが、少し考えた結果やはりだいたい半額に分けることになりました。」
(ユリエさん)

皆さんはどう思われますか?
この連載では、読者の皆さんと一緒にモヤモヤ問題について考えていきたいと思います。
こちらのコメント欄よりご意見をお聞かせください。

 

皆さんのモヤモヤ話を教えてください!

職場や家庭で、イラっとしたけど言えなかった、違和感を感じたけど言葉にできなかった、モヤモヤしているのは私だけ? と思った経験がありましたら教えてください。エピソードを掲載させて頂く際はミモレの会員ニックネームではなく、仮名でご紹介します。皆さまからのエピソード投稿をお待ちしております。

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構成・文/梅津 奏

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