皆さん、こんにちは。梅津奏です。

ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのモヤモヤエピソードをもとに、日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。

今日は、退職や異動などにより、職場を旅立つ人に対するモヤモヤをご紹介します。

 


「私、退職します!」はいいのだけれど……


エピソードをお寄せくださったのは、今年の春から管理職として働いているアツコさん(40歳・会社員)。

部下から、退職の意向を伝えられました。子どもが小学校に上がる前に、もっと自宅からアクセスのよい職場に移りたいとのこと。子育てと仕事の両立は大変そうだったし、常に人手不足の会社なので色々不満が溜まっていたことも知っています。残念ですが、上司として彼女の希望に100%応えられなかったのは事実なので、気持ちよく送り出したいと思っています。

ただ問題は、「残っている有休をすべて使い切り、なるべく早く退職したい」と言ってきたこと。

「あなたも知っている通り今でも仕事はパンパンだから、残る社員に業務の引継ぎはどうかしっかりお願いしますね」とは伝えたのですが、「そんな体制にしたのは会社なのだから私が慮る必要あります?」と彼女は強気です。私も転職経験者ですが、辞めるときこそ人の本性が出るよな、とモヤモヤしています……。


アツコさん、お疲れさまです。管理職、大変ですよね。

職場への不満を募らせた挙句の転職だったり、喧嘩別れだったりする場合、「残る者」への配慮なんて知らんがな! という発想になってしまうのかな。そこまで極端ではなくても、自分の新しいステップにすっかり目が行ってしまって、脳内お花畑状態で引継ぎはテキトーになってしまう……、そんなこともありそうですね。

 


旅立ち前の「きれいな身じまい」は、「風の時代」だからこそ必要なこと


「異動は会社の命令なのだから、引継ぎが不十分になっても仕方ない」
「私が辞めることになったのは会社の体制のせいなのだから、引継ぎに気を配る必要なんてない」

感情的には分からなくもない発想です。更にもっともっと自分に都合よく思考をブーストさせると、

「『風の時代』なんだから、今いる場所への忖度やしがらみからは解放された方がいい!」
「これぞ身軽に生きるってこと! さよなら過去の居場所!」


うーん、それでいいのかなあ……。モヤモヤ。

もちろん、引継ぎどころではない精神状態・体調だったら話は別です。でも、住む場所も職場も心のありどころも自由に移り変わっていくことを肯定する「風の時代」だからこそ、「その場からの去り方」にあらわれる自分の地力や美意識に注意を払った方がいいように思うのです。

案外世間って狭いですしね。恐ろしいことに! マジで! 職場に後ろ足で砂かけるようにして出て行ったことがまわりまわって自分の「未来の居場所」に悪影響を及ぼさないとも限りません。無駄に他人の恨みを買うようなことはなるべく避けることが、実は「身軽に(幸せに)生きるコツ」なのかもしれません。
 

引継ぎをすることは、「その場所にいた自分をしめくくること」。


そもそも、業務の引継ぎは「会社や後任のためにするもので、自分の得にはならない」ものなのでしょうか?

私も何度か、業務の引継ぎをしたことがあります。引継ぎ書の作成、資料整理、後任の担当者への説明、お客さまに引継ぎの連絡。まあまあ、いやかなりメンドウ。

でも、それらを一つ一つしていていつも思うのは、「これは、『ここにいた自分』の総括だな」ということ。苦労してまとめた案件の事後管理について説明しながら改めて自分を誇らしく感じたり、お客さまと思い出話をしていて目頭が熱くなったり、現在進行形の業務をまとめながら自分の致命的な見落としに気づいたり……。

この職場で自分が達成できたこと、築いた関係性、うまくできなかったことを振り返ることで、自分の成長を確認したり今後の課題を発見したりできます。

きちんと引継ぎをすることは、自分の棚卸をし、区切りをつけ、新しい世界に飛び込む前に必要なステップ。淡々とその作業をしていると、自分が職場に感じていたモヤモヤもふわふわと昇華していくような気もします。


とはいえ、引継ぎする者とされる者との間には常に「十分な引継ぎ」の水準にギャップがあるし、後に残される者の寂しさや妬み嫉みの感情だって無視できない。お互いある程度心を尽くしたら、あとはどこかで割り切るしかない。完璧な引継ぎなんてこの世にはないと、私は思います。

皆さんは、引継ぎについて何かマイルールなどはありますか?
 

【次回エピソードの予告】
次回は、お友達や親族との精算問題にまつわるモヤモヤについて取り上げます。

「お友達家族とたまにご飯を食べに行きます。我が家は小6息子のいる3人家族。相手方は小2男、小3男、小6男、高2女の6人家族です。会計時はたいてい我が家側が伝票を渡されるのでだいたい半額ずつに分けていましたが、家族構成を考えるとこちらがいつも多めに出していることにモヤモヤしていました。先日、試しに相手方に伝票を渡してみましたが、少し考えた結果やはりだいたい半額に分けることになりました。」
(ユリエさん)

皆さんはどう思われますか?
この連載では、読者の皆さんと一緒にモヤモヤ問題について考えていきたいと思います。
こちらのコメント欄か記事下部のアンケートフォームよりご意見をお聞かせください。
 

皆さんのモヤモヤ話を教えてください!

職場や家庭で、イラっとしたけど言えなかった、違和感を感じたけど言葉にできなかった、モヤモヤしているのは私だけ? と思った経験がありましたら教えてください。エピソードを掲載させて頂く際はミモレの会員ニックネームではなく、仮名でご紹介します。皆さまからのエピソード投稿をお待ちしております。

応募する

〔ミモレ編集室〕は、ミモレのオフィシャルコミュニティです。「好きを伝え、つなぎ、つながる」をキャッチフレーズに、〔ミモレ編集室〕メンバーの一人一人がこれまでに培ってきた美意識や好きなこと、最近気になっていることなどを自由にシェアし、繋がる場です。

構成・文/梅津 奏

前回記事「「ご挨拶だけでも」は時間泥棒?アポをとるのに必要なのは、名刺ではなく早めの自己開示」>>