フリーアナウンサー馬場典子が気持ちが伝わる、きっともっと言葉が好きになる“言葉づかい”のヒントをお届けします。
昨年、感染対策の徹底を呼びかけるために、テレビに出る人間がマスクをするのかしないのか、といったことが話題になったことがありました。
この時、聴覚に難のある方にとって、口元が見えないことは、よりコミュニケーションを困難にする、と知ることができました。
感染対策の一つとして定着しているパーテーションは、テレビやラジオの収録現場でも用いられています。
他の対策もしっかりしていることが前提ですが、マスクを外せるので、コミュニケーションの上で、口元が見えること、表情が見えることは大きいですよね。
ところが、パーテーションが置かれるようになってから、発言がかち合うことが増えてきた気がします。
例えば、話し終わったかな、と思って次の質問をしようとしたら、まだ続きがあった、とか。
司会者としてその場ですぐに譲りますし、収録の場合は編集もされるので、気づかない方も多いかもしれませんが、現場では、これまでは当たり前に出来ていたことが、難しくなっているのです。
皆さんも、マスクや、テーブルの上に置かれたパーテーションなどで、声が聞こえにくい、というご経験があるかと思います。
とはいえ、言葉がちゃんと聞き取れなくても、間にアクリル板があって、以前より距離が空いていても、「音」はなんとか聞こえているのに、なぜ会話がかち合ってしまうのか。
それは、パーテーションが置かれたことで、「気配」や「呼吸」まで遮られてしまっていることが一因のようです。
そんなミスが続いて、2004年に日本テレビ開局50周年記念事業として誕生した「福澤一座」でのトレーニングを思い出しました。
チームごとに車座になって、チーム内の誰かとかち合わないように、1から順に数字を声に出して言う。早く目標の数字までたどり着けたチームが勝ち、というもの。
互いの呼吸を読む、というトレーニングです。
当然のことながら、人数が増えるほど難しくなります。
当時も、相手が話し出す前の呼吸や気配を感じ取ることは、アナウンサーの仕事に通じると感じていましたが、ある意味当たり前にやってきたことだったので、パーテーションが置かれて、出来るはずのことが出来なくなって、久しぶりに大切なことを意識することが出来ました。
より神経や体力を使う必要がありますが、パーテーションが必要なくなった暁にはきっと、このスキルが上がっているはず! と前向きに考えています(笑)。
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