ますます進む高齢化社会。今まで他人事だと思っていた「介護」は、ある日突然やってきます。その時、気になるのはやはり「お金」の問題。ですが、一方で、「介護していると税金が安くなる」仕組みがあることは皆さん意外と知らないのではないでしょうか。介護「する側」も「される側」も、いざという時にあわてないために今、知っておきたいお金の常識を、『かんたん年金家計ノート 2022』より、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんのコラムからご紹介します。

 

●親が要介護状態なら、税金の控除が受けられることも
「介護をしていると税金が安くなる」という話を聞いたことはありませんか。これは、扶養する家族がいると「扶養控除」を使えるため、その人数が多いほど、税金(所得税と住民税)が少なくなる仕組みのためです。身近なのは、「配偶者控除」や子どもの「扶養控除」でしょう。親の介護を抱える世代が知っておきたいのは、「親が65歳以上で要介護状態なら、扶養している家族が障害者控除を使えるかもしれない」ということです。「障害者控除」は、本人または配偶者や扶養している親族が受けられる控除なのです。

 

●親の介護で「障害者控除」を受けるには
実は「要介護状態なら障害者控除の対象となるかも」ということは、あまり知られていません。障害者に準ずるほど日常生活に介護が必要であれば、障害者控除の対象になります。ただし、介護保険の要介護認定を受けているだけでは要件を満たさず、居住の自治体から「障害者控除対象者認定」を受ける必要があります。申請書に必要事項を記入して自治体に提出し、結果を待ちます。

●認定基準にはバラつきが。まずは自治体に相談を
障害者控除は「障害者控除(27万円)」と「特別障害者控除(40万円)」があり、認定基準は自治体によって異なります。例えば東京都大田区は、特別障害者に準ずる者は「要介護3、4、5に認定されている人」。障害者に準ずる者は「要支援又は要介護に認定されている人」ですが、他の自治体では、要支援は障害者控除の認定基準外のところがあります。まずは自治体に問い合わせてみましょう。

●親の収入にも一定の条件アリ
扶養している要介護状態の親が障害者控除の対象と認定されれば、扶養者として障害者控除と扶養控除のどちらも受けられます。扶養控除の要件は、同居の場合は「同一生計」であること。別居の場合は、定期的に仕送りなど経済的援助をしていることが要件となります。扶養されている親の収入要件は、65歳以上で年金収入だけなら、年金額が158万円以下です。

●最長で5年さかのぼって申請できる!
「何年も前から要介護状態の親の面倒を見ているのに知らなかった!」という場合は、過去にさかのぼって自治体に認定申請をします。過去の状態は介護保険の認定基準の書類から判断されるそうです。過去の分の認定を受けることができれば、税務署に「還付申告」または「更正の請求」をすると、最長5年さかのぼって税金の還付を受けることが可能です。

『かんたん年金家計ノート 2022』シリーズ(全3回)第1回「【簡単&時短レシピ】万能「あっさりポトフ」で作る3日間アレンジメニュー」
第2回「医療保険が本当に必要なのはどんな人?保険料を払いすぎないための“やめ時”とは【ファイナンシャルプランナーが解説】」
第3回「「親を介護していると税金が安くなる」意外と知られていない控除の仕組みと条件とは【ファイナンシャルプランナーが解説】」

『かんたん年金家計ノート 2022
講談社・編

年金生活に対応した一番使いやすい家計簿。費目や記録ページが年金生活に完全対応。コラムもシニアライフに役立つものばかり。

マネー特集:深田晶恵さん「年金生活で『本当に要る保険』を知る」「医療保険に入る前に知っておきたい健康保険制度」など気になる情報を掲載。

料理特集:本多京子さん「元気で暮らすためのラクケン料理 手間貯金のすすめ」ただの手抜きではなく、ラクして賢く作る健康ごはん、略して「ラクケン」。シニア世代のための、毎日のごはん作りが楽になって「手間貯金」ができ、しかも体によいレシピの数々をご紹介します。

週末コラム:深田晶恵さん「定年後のお金の常識」シニア世代が知っておきたい「確定申告」「医療保険」「年金の繰り下げ受給」「贈与」などについてわかりやすく解説します。

深田晶恵
個人のお金の相談を受けるファイナンシャルプランナー(FP)。(株)生活設計塾クルー取締役。FP歴は26年。金融商品や保険商品の販売を一切せずに、中立な立場で一般の方の退職後の生活設計などの相談を受けている。80代、90代の夫の両親と同居しているので、高齢者のお金のアドバイスに定評がある。著書に『知識ゼロの私でも! 日本一わかりやすいお金の教科書』『図解 老後のお金 安心読本』(以上、講談社)、『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』(日経BP)など多数。