そこで、何にでも効果がありそうな「マルチビタミン」のサプリメントについて見ていきたいと思います。この答えを導くために、実はこれまでに様々な医学的研究が行われています。


サプリメントにも副作用は存在する


ここでは、米国で行われた大規模研究を紹介します(参考文献3)。ジョンズ・ホプキンス大の研究グループは、年齢、性別の近しい被験者を、マルチビタミンを投与したグループと投与していないグループの2グループに分類。そして、この2グループで心血管疾患やがんなどの発症頻度や死亡率に違いが出るかを比較しました。

結論として、いずれの疾病についても発症頻度は大きく変わりませんでした。これは、他の研究でも同様の結果となっており、現在のところ一貫性があると考えられています。

加えて、例えばビタミンBが口内炎に、ビタミンCが美白やがんに効く、などという宣伝文句をみますが、これらも実は科学的な裏付けがあるわけではありません。

むしろ、がんに対するビタミンCの効果は否定的とする研究(参考文献4)や、心臓の病気を予防する効果が見られなかったとする研究(参考文献5)が複数あります。にもかかわらず、サプリメントが〇〇の治療になる、予防になる、などと謳う宣伝が世の中には数多く存在しており、大きな問題となっています。

 

また、少し切り口を変えて、ビタミンの危険性という点にも触れてみたいと思います。例えば、妊娠中にビタミンAの摂取量が増えると胎児奇形のリスクが増える(催奇形性)ことが報告されています(参考文献6)。加えて、ビタミンAの過剰摂取には骨量減少の副作用も報告されています(参考文献7)。 

 

さらには、ビタミンCの過剰摂取では尿路結石症のリスク(参考文献8)が、ビタミンEの過剰摂取では死亡のリスクが上昇するかもしれないこと(参考文献9)が報告されています。

また、各ビタミンの代謝は個人差が大きいことも知られており、正確にどの量から過剰と言えるのか線引きができないという実情もあります。特に、高齢者では、加齢とともに肝臓や腎臓での代謝機能が低下し、昔から飲んでいたサプリメントでも思わぬ落とし穴となって過剰投与になってしまっていることもありえます。

たかがビタミン、されどビタミンです。一般的な薬剤より頻度は少ないものの、「副作用」も存在するのだということは頭に入れておいた方がいいと思います。